「あ、隆二じゃん。おい玲央に言ってくれよ。そろそろデスリカ戻ってくれって」
「いいですけど、従うかは分かりませんよ」
「えー、なんだよそれ。そんなにここいたいの、玲央は」
「さぁ? 元々溜まり場だったから……ですかねぇ?」
そんな俺の視線を追って隆二さんを見つけた司さんは平然と会話の相手を隆二さんに変える。
それに安心していれば、帰ってきた雄樹が「げ、まだいた」みたいな顔をしてふたたびお粥を持って消えた。
……もしかして、雄樹は司さんが嫌いなんだろうか。
「ふーん? 隆二、今の言いかたわざとらしーね」
「そうですか? ま、伝えておきますよ。でも正直、あと二日もすれば戻るんじゃないですかね、ここ、ヤリ部屋ないし」
「あー。だよなぁ。アイツ下半身に忠実だもんな。喧嘩してるときだけはイケメンなのに勿体ねー」
なにやら不審な会話があちらから聞こえてくるが、聞かなかったことにしよう、うん。
そんな俺を察してか、仁さんが頭を撫でてきた。ち、ちくしょう!
「あ、それ? 噂のお粥」
「へ?」
「デスリカでも持ちきりなんだよ、ついでに豹牙も太鼓判押してた」
「えぇ!?」
やばい。デスリカのオーナーである司さんに言われてしまった。
そうなればもう否応なしにも認めるしかなくて、というかデスリカでの注文数のほうが正直多くて、だから、つまり、営業妨害するんじゃねーとか言われたらどうしよう!
「玲央がデスリカに戻ったらさ、記念として俺にお粥作ってよ、小虎くん」
「……へ?」
なのに、司さんの口から出たのは意外なもので。思わず呆けていれば司さんの頭を仁さんが小突いた。
「なにが記念だよこの性悪」
「はー? それ仁の顔のほうだろーが。悪人面!」
「うっぜー……」
げんなりと、仁さんの顔がしかめる。
そのあと帰っていった司さんは、なぜか俺にデスリカの入場タダ券(司さんが即行で書き殴った)をくれた。
やっぱり似てないかも、江藤兄弟。
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