3−3−1 

 あなたを抱きしめたい。
 あなたとキスがしたい。
 あなたとつながりたい。
 心中で願うだけに留まらず、けれどどうにか声にならないように安室は呟く。その気持ちが彼女に伝わることは許されない。でなければ彼女は逃げてしまう。
 しかし安室の震える唇に彼女の指が触れると、薄い粘膜が弾けて割れるかのように、意図も簡単に行動に起こしてしまうほどに、理性は限界を迎えていた。
 そしてこう考えていた。彼女を繋ぎ止める方法は、理性に任せることだけなのかもしれない。
 触れられていた指はそのままに、彼女の瞳を見つめてみる。透明度の高い粟色。どこか潤みを帯びていて、悲壮感ただよう形。
 するりと唇が撫でられる。
 すきになってはならないと、あれだけ強く強く言ったのは彼女であるはずなのに、まるで求めているかのように見つめるのはやはり女の性なのか、はたまた目に見えないそれの本性は恋と呼ぶものなのか。
 細くて白くて柔らかな腕を安室は舐めてやった。一瞬で腕ごと離れてしまったが、手首を掴んで自分の手元に引き寄せた。指を口に咥え、甘く噛む。引っ掻くように指の腹を歯で刺激すれば、彼女の口からは吐息が漏れた。

「いい、ですね?」

 改めて、肯定するような口ぶりに彼女は珍しく顔をしかめながら笑った。

「そういう関係じゃないですか」

 ふたりはただの友だちなのである。
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