冷たい彼の優しい手
5話
突っかかるのも、張り合うのも、しゃべりかけるのも、全て自分の方からで。
ライバル視しているのも、きっと自分の方だけ。
あの涼やかな目許が、自分に向けて本気の闘志を燃やした事はない。
悔しいけれど、確かに二人の実力は雲泥の差がある。
サスケは誰からも一目置かれていて、自然と周囲の期待を集めてしまう実力の持ち主だ。
その彼の傍らに、ドベの自分の居場所など、あるわけがない。
そんな事は痛い程に自覚している。
それでも……………。
たった一人だけに、認められたいと願ってしまう。
アカデミーに入学するより前に。
通りすがりに、いつも一人きりで河原に居る寂しそうな黒髪の少年を、見つめていた。
とても細やかな、逢瀬とも呼べない自分達の出会い。
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