冷たい彼の優しい手
3話
ふらふらと弱っている所に、里人の冷たい視線や陰口を浴びせられるのは、たまらない。
どうにかアカデミーを卒業して、木ノ葉の忍の端くれとして認められたとはいえ、里人からも認められた訳じゃない。
里の中心部を歩いていると、嫌でも耳に入ってくるのだ。
心底、嫌そうに投げ付けられる声。そして無秩序に囁かれる侮蔑の言葉の数々が。
「ほら、あの子…」
「例の子よ」
「ああ、あの……」
「化け物が……!」
下忍になれたからといって、里人から好意的に接してもらえるとは思っていないが、かといって、こうまであからさまに態度と言葉で拒絶されると、流石に堪えるものがある。
だからこそ、任務終了後にこうして重い足を引きずって、里人が行き交う里の中心部とは逆方向の森に逃亡を計ったのだ。
誰にも見られないように。
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