雨上がりの蒼穹
2話
―――――ひとつは13歳の時。
終末の谷で。
死闘の果てに力尽きたナルトの、雨に打たれたその顔。
閉じられたままの瞳から、まるで涙のように頬を伝った雨粒。
大切だった彼に、初めて本気の殺意を向け血を流させた。
―――――そして、もうひとつは16歳の時。
雨音だけが大気を震わせる静寂の中で。
事切れたイタチに、降り注ぐ雨。
壮絶な殺し合いの果てに遺されたのは、ただの、意味のない魂の抜け殻だけだった。
復讐を遂げても、そこに意味などなかった。
たった一人、血の繋がった家族だったイタチを、この手で殺した。
あるのは、その事実だけだ。
精神に直接刻まれた傷痕としかいいようのない、消せない罪の記憶。
雨がそれらを呼び起こす。
だからサスケは雨が嫌いだった。
だったのだ。
里を裏切り復讐に明け暮れていた、あの頃は。
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