泡沫の夢
11話
その容貌に面影を重ね合わせて、今ここにはいないサスケを見ていた。
サスケではないと知りつつ、その手に縋りつきたくなってしまった。
でも、それでは駄目だ。
似ている誰かでは駄目なのだ。
サスケ以外、誰であろうと、自分にとっては無意味なのだから。
それでも一向に消えない切なさに、ナルトは荒っぽい仕草で涙を拭った。
そうして沈黙の重苦しい空気を払うように、勢い良く頭を下げた。
「にーちゃん、ごめんってばよ!何かイロイロ悪かったってば!」
自分がこの男が気になるのは、結局はサスケに似ているからという、ただ一点のみの理由だけだ。
自分も男もただの通りすがりでしかなくて。
一方的に巻き込んで、騒いでいたのは自分だけ。
一人で勝手に盛り上がって、引き止めたり、泣いて縋ったりするなんて、相手からすれば迷惑以外の何物でもないだろう。
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