泡沫の夢
9話
泣きたいぐらいに愛おしく、笑いたいぐらいに嬉しくて誇らしい、その気持ち。
今になってそれが何なのか、良く分かる。
絆であり、繋がり。
抱き締めてくれる家族もなく、たった一人で厳しい忍の世界で生きてきたナルトに初めて出来た、心の繋がりだった。
何よりも強く、かけがえのない大切なもの。
なのに、それを与えてくれた彼は、どんどん遠く離れていってしまって。
もう、見えない。
どこにも、いない。
「……………おい」
「………へ?」
不意に頭上から掛けられた声に、ナルトは急に我に返った。
戸惑い上げた顔を、流れ落ちる眦を伝う物。
止め様もなく、濡れた感触が、次にはひんやりとしたものに変わる。
瞬きをすれば、ぱたぱたと涙が零れ、よく見れば男の手蓋にも涙の染みが出来ている。
「アレ?アレレ?」
どうやら自分は無意識に、掴んだ相手の腕に縋って泣いていたらしい。
補足:
サスケが腕につけてるサポーターみたいなのの名称がわからないので、手蓋(てがい)と表現しました。
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