泡沫の夢
7話
(……やっぱり……他人の空似だってばよ?)
頭では、分かってる。
ここにいるはずがないのだと言うことぐらい、理解はしている。
黒い髪、黒い瞳。
いないと分かっているのに、あれ以来ずっと、無意識に探し続けていた彼の姿。
だから、もしかしたら…と、そんな甘い幻想に捕われてしまったのかもしれない。
男は良く似てはいるが、どう考えても別人だろう。
当たり前だ。
サスケは、とうに自分の前からいなくなってしまったのだから。
連れ戻せなかった悔恨に、嘆き、悲しんだ胸の疼きは、一向に消えてなくならず。
それどころか、いもしない存在をいると錯覚してしまう程に、今も心に深い翳を落としている。
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