泡沫の夢
4話
避ける間もなく、今度は地面へと尻餅をつきそうにる。
それを引き止めたのは、手首を掴んできた相手の強い腕だった。
「あ!ありがとだってばよ」
すぐに離れていったその腕を追うように視線を上げたナルトは、顔を仰向け、そのままポカンと口を開けた。
信じられぬ思いに、蒼い瞳が大きく見開かれる。
―――――誰よりも、何よりも。
会いたいと願うあまり、自分は都合の良い幻影を見ているのだろうか。
けれど、いくら目を擦ってみても、目の前の相手は消えてなくなりはしなかった。
食い入るように見つめながら、唇が小さく、吐息だけで彼の名前を呟いた。
「…………サスケ……」
流れに逆らうようにして立っている男と、刹那、視線が交わる。
一瞬、男が少し顔を強張らせたような気がした。
だが、すぐにそれは感情を極力殺した黒い瞳の奥に消えていった。
[ 前 へ ][ 次 へ ]
[目 次 へ ][TOPへ]