泡沫の夢
3話
たった一つ、奇跡的に終末の谷から持ち帰ることの出来た、サスケの形見の品。
それが、消えてしまう。
自分の手の届かない所へ行ってしまう。
彼自身のように。
(そんなの…、そんなのイヤだってばよ……)
そう思った途端、堪えていた悲しみが胸にどっと押し寄せてくる。
自分の無力さに、涙が込み上げてきた。
零れる滴を留めるように奥歯を噛み締め、ぎゅっと目を瞑る。
けれど自分の想いに深く沈み込むあまり周囲に気を配っていなかったナルトは、混雑する人波に背中を突き飛ばされてしまった。
「うわっ…!」
結構な衝撃を受けてよろめいた小柄な身体が、傍らの人間に激しくぶつかった。
[ 前 へ ][ 次 へ ]
[目 次 へ ][TOPへ]