うちはさん家の気まぐれ猫
11話
むくむくと、違う何かが昂ぶってきたようです。
揶揄い混じりの顔から一変して真剣な表現を浮かべた佐助は、鳴門の手首を強く掴み寄せました。
『………我慢の限界だ』
『へ?』
そして逃げ場を奪うように両手で作った囲いの中へ、恋人の身体を大切に閉じ込めてしまいました。
『鳴門…………』
甘やかな低音に密やかな囁き声は、まるで睦言のように響きます。
じぃーっと自分だけを見つめてくる眼差しに、一瞬、微妙な色気のようなものを感じ取ってしまい、鳴門はぶわっと全身を真っ赤に染めました。
いきなりの甘酸っぱい展開に、鳴門の単純な脳ミソは着いていけません。
『な、な、なに!?なにィ!?急になんだってばよ!?』
ドギマギとした心臓を誤魔化すように、慌ててその甘苦しい腕から逃げ出そうとします。
けれど佐助は許しません。
[ 前 へ ][ 次 へ ]
[目 次 へ ][TOPへ]