名も知らぬ君との出会い
4話
サスケが胡乱げな眼差しを向けても、少年はニコニコと笑っている。
やたらと嬉しそうに、その頬をふにゃりと緩めて。
それは全く邪気のない、何ら裏も表もないだろう笑顔だった。
(こいつ………)
何事にも、表と裏がある。
世の中に嫌という程溢れている、知りたくもない人間の表と裏の顔。
それらをサスケは身を以て経験してきた。
あの夜から。
己に向けられる同情の裏に潜んだ、好奇の視線。
慰めの中に含まれた、嘲笑の響き。
表だってその不幸を悪し様に言う者はなくとも、裏では悪意に満ちた噂や、一族を貶める話が、まことしやかに囁かれている。
それが現実だ。
外面を取り繕うばかりの汚い世間に、大人に負けまいと、必死に意地を張ってきた。
無理矢理感情を押し殺し、誰に何を言われても、全てに興味のないふりをして。
(でも、こいつは………)
全く何の含みもないと素直に物語っているような、ウスラトンカチな少年の言葉は、もやもやとした最低な気分を、不思議と紛らわせてくれるものだった。
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