名も知らぬ君との出会い
5話

脳天期すぎる明るい声も、今のサスケには寧ろ心地よかった。


「…この、ウスラトンカチ」


「へ?なになに?」


「…………フン」


(こいつは空気が煩わしくない)


それは、自分が独りぼっちになってからこれまで、一度としていだいた事のない感情だった。


いつしかこの無邪気な少年の傍らは、サスケにとって、自然に呼吸できる数少ない場所になっていった。






「すっげー、ふしぎだってばよ!」


「…………」


呼ぶべき名前を知らなくて、黙って見つめていれば、鮮やかな色彩が振り向いた。


目が合うと、やたら嬉しそうに満面の笑みを向けられて、とくん、と心臓が訳の分からない脈を打った。


「……え?」


騒つく胸を押さえて、思わず首を傾げる。


跳ね上がった、鼓動。


高揚感にも似た、震え。


それらはほんの一瞬で、捉えどころのない曖昧なものだったけれど。


急に、なんだ?


自分の反応の理由が、自分でもよく分からない。


戸惑ったように漏れた声は、幸い相手には聞こえなかったらしい。


純粋な好奇心を滲ませて、少年が空を指さした。


「ぽこぽこしてるってばよ!」


「………何が?」


「ほら、うえ!」


「………?」


「うえ、みてみろってばよ!」


サスケは天を仰いだ。


空が、とても高い。


清冽に澄み渡る青空に、柔らかに重なる雲の群が、まるでさざ波のように連なり広がっていた。


秋特有の空に浮かぶ、うろこ雲。




補足:
アカデミーに通う前なので、ナルトのしゃべり言葉は全部ひらがなにしています。ナルト、おバカなので(笑)。
サスケは頭良いので(笑)、しゃべり言葉に漢字を使ってます。
ちょっと差をつけ過ぎかなぁ(^_^;)




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