うちはの神様
4話
神様と呼ばれた彼は、突き放しはしないが、かといって自ら抱き寄せることもせず、ただ黙ってされるがままになっていた。
でも、それでいい……と少年は思った。
神様が何もしてくれなくても、自分に神様を抱き締める腕さえあれば、それでいい。
切に、そう思う。
なぜそう思うのか、少年自身にとっても凄く不思議なのだが。
無意識の領域で、ただ、そう思うのだ。
「へへっ、神様!」
見上げれば、何の感情も浮かべてはいない、尋常でなく整った美貌が、すぐそこに存在していた。
風になぶるに任せた髪は、闇夜を映した漆黒。
冷たい瞳も黒。白目の部分が黒く、眼球は真紅に染まっている。
皮膚はまるで張り子のように、上から幾重にも紙を張って作ったような、不自然な皺が寄っている。
それは、普通の人間には決して有り得ない姿形で、それが余計に、彼を世俗から超越した存在に見せていた。
「……オレは、神様じゃねェ」
「えー?神様だろ。オレってば、神様が雷よぶの、見ちまったもんよ!」
[ 前 へ ][ 次 へ ]
[目 次 へ ][TOPへ]