うちはの神様
3話
閉鎖され隔離された空間は、不気味なほど静まり返り、年月を経た家々が暗く陰気な影を落としている。
少年の足下を照らすのは、仄暗い三日月の明かりだけ。
だが、そんな重苦しい空気に気圧される風もなく、少年の足取りは軽やかだった。
「………また来たのか」
不意に。
静かな、それでいて良く通る、凜とした声が響く。
少年の足が止まる。その視線の先。
一瞬、声をかけるのを憚られるような、厳粛な雰囲気を身に纏い、佇む人影。
どこかうんざりしたような冷たい声音に、だが怯みもせず、逆に少年の顔には満面の笑みが浮かんだ。
「神様ーっ!」
ブンブンと手を振り駆け寄った少年は、自分より遙かに大きい青年に向かって必死に手を伸ばすと、精一杯の思いを込めて抱きつく。
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