冷たい彼の優しい手
10話
暖かい何かが、じわりと触れたそこから広がっていくようだ。
目を瞑り、その心地良さに思い切り浸ってみる。
身体の辛さは変わらないはずなのに、不思議と痛みが和らいだ気がする。
寂しさで泣き出したくなるような感情の波は、いつの間にか消えてしまった。
代わりに込み上げるのは、ふわふわとした心地。
ずっと夢見ていた。
こんな風にサスケと仲の良い友達みたいに、和やかな時間を過ごせる日が来る事を。
決して喧嘩したい訳じゃないのに、意地っ張りな性格が邪魔をして、いつも突っかかるような物言いしか出来なくて。
本当はもっと素直になりたいのに、いつも上手くいかなかった。
縮まらない距離がもどかしくて、埋められない何かを感じる度にずきりと胸が痛みを訴えた。
だからこそ余計に。
何の気紛れか、はたまた偶然なのか、彼の方から手を差し伸べてくれた事が、まるで夢のようだった。
味わった事のない心地良さに、いつまでも浸っていたい。
1分1秒でも長く、この時間が続けばいいのに。
[ 前 へ ][ 次 へ ]
[目 次 へ ][TOPへ]