冷たい彼の優しい手
9話
「夢ってすげーな。サスケが優しーってばよ」
嬉しくなって、胸に浮かんだそのままを言葉にすれば、切れ上がった瞳がゆるりと眇められる。
眉間にくっきりと皺が寄る。
どこか気遣うような優しさで触れている掌と、不機嫌そうな表情のギャップに堪らず笑えば、サスケは憮然とした声で、夢じゃねェ…と呟いた。
何だろう。
サスケの一言が、自らそうはっきり否定してくれたのが、すごく嬉しい。
「へへへ、夢じゃねーのにサスケが優しー。ありえねーぐれェ嬉しー」
「フン。そんだけ減らず口叩けんなら、余裕だな。さすがに丈夫だけが取り柄のウスラトンカチだけはある」
相変わらずの刺々しい口調だった。
けれど、そんなきつい言葉ですら妙に嬉しく感じるのは、サスケの思いがけない優しさを知ったから。
額に置かれたサスケの掌は、冷たくて気持ち良かった。
そういえば、心の暖かい人は手が冷たいって、誰かが言ってたっけ。
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