冷たい彼の優しい手
8話
―――――その時。
頭のすぐ側で、下草を踏みしだく音がした。
明らかに人の気配。
身を起こす気力もなく、だがそれが妙に気になって、ナルトはふと薄目をあけた。
真っ直ぐ覗き込んでくる、漆黒の瞳。
涙で潤んだ視界には、すぐ真上にあった至極綺麗な見知った顔は、奇妙に歪んで見えた。
「…………サスケ?」
夢かうつつか判然としないまま、確かめる為に名前を呼んでみるが、応えは返らなかった。
代わりに彼はナルトの傍らにひざまずくと、スッ…と額当てをずらし、その白い手で額に触れた。
まるで熱を計るかのように。
そしてそのまま、少し体温の低い冷たい掌を額に当てた。
冷んやりと心地よい感触。
熱を冷ますかのように触れている、サスケの手。
余りにそれが優しくて、胸の奥がくすぐったくて、ナルトはふにゃりと笑った。
(これって、夢だってば?)
熱に浮かされて夢でも見ているのだろうか?
だって、さっきまで泣きたくなるぐらい焦がれていたサスケが、こんなにすぐ傍にいて、その上、優しく額に触れてくれているなんて、あまりにも現実味が乏しすぎる光景じゃないか。
[ 前 へ ][ 次 へ ]
[目 次 へ ][TOPへ]