believe it or not
9話
応えは一度として返らない。
まるで自分の囁く言葉を、最初から信じていないかのように。
数年前なら、きっと瞳を輝かせ、零れるほどの笑顔を浮かべたにちがいない台詞にも、ただ苦く、哀しげに表現を歪めただけだった。
儚くて、どこか色の抜け落ちたような印象を与える横顔だった。
夢中でナルトから逃れようとしていた時には気付けなかった、蒼く輝く瞳に残された深い影の存在に、息が詰まる。
それを見た途端、意識の芯が不意にすっと冷たく凍えた。
ようやくの望みを得られて有頂天だった頭に、強烈な罪悪感と自責の念が浮かぶ。
そうして気が付いた。
あの時の―――帰ってこいってばよ、と言ったナルトの顔は、今にも泣きそうに歪められていなかったか?
潤んだ赤い目をしていなかったか?
彼は、自分が拒絶し続けた数年間、人知れず泣いていたのかもしれない。
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