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*Attention
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感想、ご希望のキャラ等はコメントへ
日によってはR15程度のものもあります。
ご注意くださいませ。
*発売日決定につき再開*
▼あと89日
〜Atobe〜
何度、助けてもらったのだろう。どれだけ励ましてもらったのだろう。振り返れば思い出す数々の出来事。でも、それも今日で終わる。
「幸せになってね」 「当然だろ。お前も、な」
きっと、無理だと思った。けれど、最後なのだ。最後くらい心配をかけたくない。笑え。
「もちろんだよ」
精一杯の笑顔で、頷く。嘘だ。きっと私は幸せになんてなれない。あなたを諦めたその先にある幸せを、私は幸せとは呼べない。
けれど。
あなたに幸せになって欲しいというその言葉は、紛れもない本心だった。私にとっての幸せと、あなたにとっての幸せは、違った形だった。でも、いいの。私は、あなたが笑える未来を選び取ったのだと。そう自分に言い聞かせるくらいの強がりは、許してね。これが最後の我儘にするから。
▼あと90日
〜Hiyoshi〜
誕生日おめでとう、と隣の席のお前から手渡されたのはラッピングされた濡れ煎餅だった。「………サンキュ」「あれ?嬉しくない?好物じゃなかったっけ?」「いや、好物だ」そう、確かに好物だが。誕生日に濡れ煎餅というのはどうなんだ、有難いが。「食べてみて!」そう満面の笑みで言われ、後で食べるとは言えそうにない。ラッピングをほどき、濡れ煎餅を一つ食べる。「……美味いな」「もっと!もっと食べて!」「なんでだよ」「いいから!」そう言われ、不思議に思いながらも一つ、二つと食べ続ける。すると、残りが半分くらいに差し掛かった時。口の中に違和感を感じた。食べ物ではない何かを噛んだ感触。「……?」恐る恐るそれを口から取り出すと、どうやら折りたたまれた紙のようだ。視線をお前に向けるも、表情に笑みを浮かべたまま口を開かない。そして、そっとその紙を開いた俺は、硬直する。
どうやら、誕生日に濡れ煎餅をプレゼントしてくる女との物語は、ここから始まるらしい。
「 だ い す き 」
▼あと91日
〜Tezuka〜
買い物の帰りにペットショップの前を通るたび、あなたの視線がそこに向かうことに気付いていた。そして今日も。「ねえ、入ってみようか?」「構わないが…何故だ?」その質問には曖昧に笑うことで答え、二人で足を踏み入れる。物珍しそうにいろんな動物を見て回るあなた。「気になる子いた?」「いや……」そう言葉を濁しながらも、彼が視線を向けたのは窓に鼻をくっつけてこちらを伺っているベージュの子猫だった。こちらを、というよりもあなたを一直線に見つめている。「じゃぁ新しい家族はこの子に決定だ」「待て。俺は何も言っていないぞ」「でも、この子はあなたを気に入ったみたいだよ?見る目のあるにゃんこだねー」「しかし…」「いいのいいの。私からのクリスマスプレゼント!」私も動物が好きだし、猫を飼うのは夢だった。それに。猫を愛でるあなたを見てみたいと思ったのだ。これはあなたには内緒だけれどね?
▼あと92日
〜Tezuka〜
再開した彼女は、髪型や服装に変化はあるものの、纏う雰囲気はあの頃と変わっていなかった。しかし離れていた数年間が、その距離を縮めることを躊躇わせていた。彼女を呼ぶと、拗ねたように俺を見る。
「昔みたいに、名前で呼んでくれないの?」
頬を赤くしながら、俺から目を逸らす彼女。俺は心底安堵する。俺達は、あの頃のように戻っても構わないのだと気付かされたから。
▼あと93日
〜Zaizen〜
「嫌です」そう言うと、彼女は眉を下げて困ったみたいに笑った。「別れたくないです」「でも、財前君のためにならな…っ!」尚も喋ろうとする彼女の口を、俺は強引に塞ぐ。そんな言葉、聞きたない。「何で?勉強もやっとるし成績も伸びてる。あんたと付き合うてても何も問題ないやん」それでも、彼女の表情は晴れへん。わかっとる。俺がただをこねたところで、俺らの関係は長くは続かん。彼女が俺を想って、自分の気持ちを我慢してそう言ってくれてることも、わかっとる。
けど、それやったら。 俺らが一緒におれる未来はないんやろか?
そんな、先代達が何千回何万回と抱いてきたであろう疑問を、同じように抱いてしまう自分に嫌気が差して、唇を強く噛み締めた。
▼あと94日
〜Oshitari〜
「うっ…ぐっ…」「まだ泣いとるんかいな」ベッドの上、侑士の隣でぐずる私。先ほどまで二人で恋愛ものの映画をみていたのだが、その結末の衝撃に未だに私の涙は止まらない。すると侑士は私の頭を優しく撫でる。そしてその腕で私を抱く。「よっしゃよっしゃ。今晩はずっと抱き締めといたるから、安心して寝え」「っ……う、ん」侑士の鼓動が聞こえる。結末を見て泣いたのは、感動したからではない。怖くなったのだ。侑士と離れる時のことを、少しだけ考えてしまったのだ。けれど侑士は、そんな私の気持ちを全てわかった上で、こうして甘やかしてくれる。………侑士の鼓動は、落ち着く。どうか、どうかこの温もりがずっと私のそばにありますように。
▼あと95日
〜Marui〜
二人の舌の熱さで、溶けていくチョコレート。角度を変えるたびに聴こえるあなたの吐息までもが甘くて、目眩がしそうだった。「はぁ…やばいな、お前ほんとに甘い…っ」また、重なる。普段は余裕綽々といった感じなのに、お菓子を介して私と触れ合うと余裕がなくなるらしかった。お菓子に興奮しているのか、私との触れ合いに興奮しているのか微妙なラインだ。しばらく私の唇を堪能すると、ゆっくりと顔を離す。その呼吸はまだ整わない。そして掠れ気味の声で、あなたは悪戯っぽく微笑みながら言う。その言葉を聞いた私は、一気に顔に熱が集まるのを感じたのだった。
「これで、チョコ見る度にこのこと思い出すだろぃ?」
▼あと96日
〜Niou〜
今夜が、お別れなんだろう。 あなたの気持ちの変化に、なんとなく気が付いていた。身体を重ねることで始まった私達の関係。けれど私はいつの間にか、あなたを好きになってしまった。その私の気持ちはあなたに伝わってしまったのだろう。好きになってしまった私が傷付くから、あなたはこの関係を終わらせようとしているんでしょう?
「あい、してる…っ」
あなたの背中に爪を立てながら、最後なのだからとそう告げる。
「俺も…じゃよ」
そう返してくれたあなたの顔は、今にも泣き出しそうで。嘘つきなあなたの、最後の嘘だけは。何故か、優しい嘘だったのだとわかってしまった。
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