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*Attention
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感想、ご希望のキャラ等はコメントへ
日によってはR15程度のものもあります。
ご注意くださいませ。
*発売日決定につき再開*
▼あと73日
〜Kite〜
そっと指を絡めると、驚くほどに冷たくて。平気そうな顔をしているくせに、やはり寒さに弱いのだと実感する。「急にどうしたんです?」「永四郎、すごく冷えてる」「ああ、俺はあまり寒さに慣れていないのでね」口でそう言いつつも、辛そうな素振りは見せない。相変わらずの忍耐力だ。私はその冷え切った手を両手で包む。少しでも私の熱が伝わるようにと。すると、あなたは微笑む。「寒い冬も、悪くありませんね」「どうして?」瞬間、あなたは私を抱き寄せる。全身があなたの温もりに包まれて、寒さから覆ってくれる。
「あなたに、より多く触れられますからね」
▼あと74日
〜Atobe〜
「あ」「よう」。偶然街で、跡部に遭遇した。けれど、違和感。「あれ?跡部、縮んだ?」「アーン?」「いつもより身長低…あ、違う、私がヒール履いてるからだ!」跡部は私の足元に目をやる。そこには10cmほどのヒールのブーツ。私の身長は160cmだから、今私は170cmくらいで、跡部との身長差は実に4cmしかないのだ。「すご!跡部と目線同じ!」「何はしゃいでやがる」「いつも見下されてるからさ」当たり前だろうがと、跡部は笑う。私も一緒になって笑いながら、でも跡部に見下されてないのも物足りないなぁのんて、いつもと違う目線になって思ったのだった。
▼あと75日
〜Shiraishi〜
俺のどこを好きになったん?と問えば、「顔」と即答された。切ない気がせんでもないけど、君好みの顔で産んでくれた両親に心底感謝した。「白石は?」「ん?」「私のどこ、好きになったの?」興味があるのかないのかわからへん、どうでもよさそうなテンションで君が聞き返す。
そこで俺は言葉に迷う。
君は別に、万人受けする美人やない。けど、その瞳も唇も声も限りなく愛しい。この感情というか感覚を、どう伝えたらええんやろう。「ごめん。なんか、上手いこと言われへん」言葉に出来ひん自分が情けない。けど、君はすぐにクスクスと笑始める。「でしょう?好きになる時は理由なんてないよ」だから、顔って言ったの冗談だからね。そう、続ける君。
そう。俺は、君のそういうところが好きや。今俺らの間にある雰囲気とか空気感とか、そういうのが好きや。俺はこういう感覚を、”運命”って呼ぶんちゃうかなって思っとる。
▼あと76日
〜???〜
手塚は、ドイツへと行ってしまった。また、私を残して。
「なんだ、また泣いてんのかよ」「跡部には関係ない」「何でお前はよりによって手塚なんだ。あんな堅物の何がいい」「そんなの、私だってわからない」
跡部は、笑う。優しい目をして。
「お前に、一ついいことを教えてやろう」「なに」「お前だけが辛いわけじゃねえだろ。甘えんな」「……はい?」
「残される方も残していく方も、痛みは変わらねえよ」
その言葉に、私は息を飲む。
跡部は、この男は。なんて聡明なのだろう。そして私なんかよりもずっと、手塚のことを考えている。
「手塚も、辛かったかな」「そんなもんは手塚本人に聞け」「そう、だね。……うん、そうする」
空を、見上げる。
秋が近づく空は、青くて高くて広くて、腹立たしいほどに美しかった。これから私は、この青を見るたびに彼を思い出すだろう。そしてその空虚さに涙も流すのだろう。けれど、彼がほんの少しでも同じ気持ちで居てくれるのなら、少しでも痛みを感じてくれているのなら。
今は、それだけで充分だ。
▼あと77日
〜Tachibana〜
逞しい腕に抱かれながら、思う。かつてこの腕は、自ら全てを手離した。そして何もない場所から、あなたはもう一度歩き始めたのだ。「ねえ、桔平」「なんだ」「もう、何処にも行かない?」問うと、微かに腕に力が篭る。そして僅かな逡巡の気配の後、さらに強く抱き締められる。「ああ。俺の居場所は、此処だからな」言葉の端々から、覚悟が、決意が感じられて。何故か。
私は、泣きそうになった。
あなたを愛してくれるこの場所を、あなたも愛しているという事実が、バカみたいに嬉しくて。
「良かった。此処にいてくれるんだね」「ああ、約束しよう。もうお前を置いては行かないさ」その言葉に、思わず笑う。私は何も、置いてけぼりを食らうことを心配したわけではなかった。ただ、あなたに集いあなたを心から尊敬する、若き仲間達を不安にさせて欲しくなかった。けれどそれも、杞憂だったようだ。あなたは約束を違える人ではない。
良かった。あなたの腕はもう、かけがえのないものを数え切れぬ程に抱えているようだ。
▼あと78日
〜Niou〜
2日間学校に来ていないと思ったら、案の定風邪を引いていた。現役の頃ならまだしも、引退してからの彼は実に不健康的だ。「食べたいものある?」「食欲ない」「……そう」薬も飲まないし、ご飯も食べない。治るものも治らないのは当然だ。呆れてため息をつくと、のっそりと上体を起こし、「汗かいて気持ち悪いぜよ…着替えたい」と、辛そうな顔で告げる。「わかった。拭いてあげるよ。待ってて」部屋を出て行こうとすると、腕を掴まれ阻まれる。「なに?」「いい」「は?」「俺が取りに行くぜよ。だから、ここにおりんしゃい」「………もう」この男は、好調の時は甘えるのも抜群に上手い。けれど思うに、自分が弱っている時ほど甘えられないヤツなのではないだろうか。矛盾しているなと思いつつも、弱ってるくせに強がって、そのくせ私が出て行くのは寂しがる。そんなこの男が私は愛おしい。私は彼をそっと抱き締める。「どこにも行かないから、病人はじっとしときない」「………プリッ」「よし。じゃあ待っててね」「なあ」「ん?」「………シャケの入ったお粥なら、食べてもいいぜよ」思わず笑いそうになるけれど、せっかく素直になったのに機嫌を損ねてはいけない。だから、私は了解、と言いながら彼の頭を撫でた。
▼あと79日
〜Tezuka〜
私は女としては大きくも小さくもない身長だけれど、手塚とは約20cmの身長差がある。だからいつも見上げる立場なのだけれど。
「手塚。立って」 「?」
彼は不思議そうにしながらも、特に躊躇うこともなく私の前に立った。そして私は、座っていた椅子の上に上履きを脱いで立つ。すると、初めて手塚に見上げられる立場となり、その新鮮な眺めに思わず笑ってしまった。
「わ、手塚に見上げられてる!すごい!わー!」 「っ…!!おい」
これ見よがしに手塚の頭を撫でたりしていると、手塚は軽く動揺しているようで、その様子がおかしくて更に撫で回した。
「いい加減にするんだ…っ」 「え、ちょ、わあっ!」
私の悪戯に耐え兼ねた彼は、私を軽く抱き上げ、床へと降ろす。怒っている割には優しく降ろしてくれる辺りに、彼の人柄が現れていた。
「お、怒った?ごめんね」 「怒ってはいない。ただ…その…」
落ち着かないだけだ。そう言って私から視線を逸らす彼の頬は、ほんの少しだけ赤い、ような気がしないでもない。けれどそれは教室に差し込む夕陽のせいなのかもしれない。
▼あと80日
〜Atobe〜
幼い頃のお前の言葉が、俺は忘れられない。「跡部は、テニスも上手くて頭も良くて英語も話せて、何でも出来るんだね。すごい!」そう、目を輝かせて頬を紅潮させながら、本当に嬉しそうに言ったのだ。今思えば、その言葉が俺を縛ったのかもしれない。お前を落胆させたくなくて、その笑顔を曇らせたくなくて、俺は何でもこなしてきたのだろう。そしてこれからも、俺は何でも出来なければならない。それはきっと、重いことだ。だが。俺にとってはこれほどまでに温かな重みはない。縛られることの痛みですら甘く感じ愛せてしまう程、俺はどこまでもお前のものなのだ。
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