■ ■ ■


「はぁーい、松田くん」
いきなり曲り角から現れた同期がちゅっ、と投げてきたハートを軽やかに避ける。すっと屈んで避けた松田にミョウジはちぇ、と艶やかな唇を尖らせた。

「は、ざまぁ」
「え、俺にもやってよー、じんぺーちゃんだけずりぃー」
全力でうざい顔をして貶す松田と対照的に追いついた萩原がピョコピョコと跳ねてミョウジにねだった。それを見て機嫌を良くした彼は萩原の耳元に顔を近づける。

「どぉーしょっかなぁ…?」

色気たっぷりに吐息を吹き込まれた萩原は顔を赤くしてうずくまった。

「これが野郎ではなく、綺麗なおねぇさんだったらどんなにいいか…!!」
「うるせぇ、半殺しにしてやる」
萩原の心からの叫びにミョウジはさっきの機嫌は何処へやら、萩原の背中に足を乗せてグイグイと体重をかけた。



「お前、ほんと色気だけはすげぇよな」
これは高校生の時に伊達に言われた言葉だったか。無駄に出る色気に、ナマエは自分は生きてるだけでエッチな人間なんだと気がついた。それが良いことか悪いことかとは置いておいて、彼の意識に大きな影響を与えた事は確かだった。
正直なところ、彼は勉強は良くて中の上、悪くて下の中。運動は中の上、ジャンプ力が何故か壊滅的。
それを誤魔化すのに色気を使った。上手くいったかは別だが。

「まって、おめぇなんでそんなにジャンプ低いの??」
「…知ってます?重力って、人によって違うんですよ」
「……ジャンプの滞空時間の短さが異常だろ、縄跳ぶ以前の問題だわ」

「制服胸元開けるのやめろよ、治安が悪くなる」
「えっ、じゃ閉めるわ」
「…まって、閉めるのも良くない。見えないエロスがすごい」
「どうしろと???」

色々あったが、今までの人生どうにかなってきた。それが色気のおかげか、伊達のおかげかは謎だが。


「マジで伊達様には thank you forever」
「妙に発音いいのやめろ」
ごめそ。と六法全書で殴ってきた降谷に頭を押さえながらひらひらと手を振る。バカになったらどうしてくれるん?と呟いたナマエに「もう手遅れ」と笑顔の諸伏がトドメを刺した。

「嘘つけ!!俺がバカだったらアイツもバカだろ!!」
腫れ上がったタンコブの様子を手で確認しつつ、ナマエが萩原が犯人かのようにビシリと指差す。

「…俺!?嘘でしょ、お前と同レベだと思われてたの!?そんなバカ滅多にいねぇよ!?!?」

バカにバカ呼ばわりされた衝撃でガッターンと萩原のイスが倒れる。呆然とした顔でナマエを見つめると、相手はゆっくりと頷いたあと、親指を立てた。good friendだぜ…!と満足気な顔でニコリと微笑む。見たことも無いような、同類を見る目に萩原はアングリと口を開けた。

「ウルセェ馬鹿」
「じんぺーちゃん!?!?俺、爆処理テストトップだからな!?」
「…ウルセェ、ロン毛くそチャラ男!!」
親友(仮)な松田と取っ組み合いを始めた爆処理テストトップ。惜しいやつを亡くしたぜ…、と諸伏と伊達が派手な右ストレートを喰らった萩原に手を合わせた。

それを見た、ナマエが首を傾げる。

「…やっぱバカじゃね?」
「否定できんな」
ギャンギャン騒ぐ爆処理テスト1位と2位をみて、首席が静かに頷いた。
類は友を呼ぶって言うし

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