片付け

蒸し暑さで目が覚めた。じっとりと湿った首筋が気持ち悪い。適当に引っ掴んだタオルで拭くと、昨晩と同じように冷たい床を探して這いずり回ったであろう野郎共が行き倒れていた。

昨晩、テンション高く祭から帰ってきて、そのまま酒盛りにもつれ込んだ。ツマミを作る諸伏を前に、作られた端から伊達と一緒に摘んでいた。
酒の入って機嫌のいい大人ほど面倒臭いものはない。酔うほどハメを外せる場面もそうそうないが。
どことなく硝煙とソースの混じった匂いが充満していた。机の上には我が家に開店した一晩限りの居酒屋の残骸が残っていた。一角だけ綺麗に積み重ねられた皿がある。確か、諸伏が座っていたところだったか。変な酔い方をしたらしく、無言でゴミを真横に整列させていたのを思い出した。あまりに黙々と作業していたので背の順にしろよ、と言ってみたら大きい順に並べていた。あまりに機械的でSF小説のような未知の恐怖を味わった。
ついでに一言付け足して置くならば、確実に滑る一発芸を披露する萩原と、酔ってゲラになった弟、真顔で採点する降谷が特に地獄だったと言っておく。

片付けの面倒くささを想像していたら、無言で腹筋を使って起き上がった陣平がしばらく唸り声をあげ始めた。触らぬ神に祟りなしと水を飲みつつ味噌汁でも作ろうかと鍋に水を入れる。がたんと少々荒々しくコンロにセットすると同時に、人を殴る鈍い音と萩原の太い叫び声が聞こえてきた。

「いって!!」
今何で俺殴られた!?と起きて数秒で騒ぐ声に陣平の右ストレートが綺麗に入った。
「頭に響く」
弟のストレートの方が萩原の頭には響いていただろうに。

「お前ら今日帰んだろ」
冷蔵庫に眠る食材で適当に作った味噌汁と作り置きを引っ張り出して朝ごはんとなった。眉間に皺を寄せて無言で食べる奴が多いところを見ると昨晩は随分と楽しめたようだ。今日帰るとは思えないほど、全く片付いていない部屋を見る。結局テレビ前で全員寝るような酷いものだったから、今なら強盗が入っても気がつかないような有様だった。2日でよくここまで散らかせるものだと感心していると、真っ先に食べ終わった伊達が無言で荷物を其々のカバンに押し込み始めた。

「シワになんだろやめろや」
「じゃあ散らかすなよ」
「俺ん家だから俺のはほっとけ」
「陣平はしれっと俺に片づけさせようとすんな」

伊達はきっとこれからも苦労するな、と言えば満更でもないように苦笑された。

「誰のだ、このパンツ。正気か?」
「何色ぉ?」
「いちご」
「それ俺だわ」
「萩原おまえ…」

やんややんやと大騒ぎをしているのを背景にメールを見ると同僚からこの前の案件がどうにかなったと内容がゼロな返事が返ってきていた。どうなったのかは気になるが俺が適当に返事をしたから腹いせなんだろう。癪に触ったので貸し1、とだけ返信した。
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