流しそうめん

「流しそうめんやろうぜ」
「夏の風物詩一通り人ん家でやろうとすんなよ」
腹減った、と呟いた瞬間、閃いたとばかりポンと手を叩いた萩原の声に思わず口を挟む。隠しているようだが、そーだぞ迷惑だろと反対している諸橋と降谷の目が輝いたのがハッキリと見えた。

そうめんだけならまだしもどこに流すんだと言えば無言俺を見た後、ウチの庭を見つめる5人。庭まで散らかす気か、と床に落ちていた菓子袋を摘んで目の高さまで持ち上げる。ヒラヒラと揺らすと真顔の弟がそっと近づき菓子を手のひらに乗せてきた。
「お主も悪よのぅ…」
「殺すぞ」
思わず関節技を決めた。

「萩んちに竹あった気がするわ」
「何でだよ」
「去年だか一昨年だかに切り倒してきたのを使ってやったんだよな」
「もって洗ってくるか」
ギブアップの叫び声を聞きながら、仲間を容易く見捨てた共犯者たちは流しそうめんを我が家の庭でやる方向で話を進めるらしい。尊い犠牲者を見せしめに、絶対に流す前より庭を綺麗な状態にして帰る誓約を菓子箱の裏で交わして見事条約は成立した。小村壽太郎もこんな気持ちだったのだろう。


「かき揚げでも作るか」
「暑いの嫌なんだけど」
「避暑地に仕事場あけてやるよ」
「じんぺーちゃんがクーラー直したからね」
「ヒロがんば」
「クーラー効いた部屋から応援してっから」
「ずりぃ…。ゼロ、俺ら親友だもんな」
「……ちょっとよくわからない」
「なぐるぞ」

そうめんだけで腹を膨らますには足りないと言い張った男たちの為にかき揚げを作ることになり解放された仕事場や、その過程で起きた数々の戦の結果(主に諸伏&巻き込まれた伊達VS涼みたい降谷&食券で買収された陣平+実況萩原の仁義なき戦い)、2時間後になんとか準備が整った。

たっぷりと山盛りに乗せられた素麺を萩原家から借りてきたボールで運び、小皿に麺つゆを注ぐ。何でもこだわりの麺つゆらしく、出汁について長々と語っていた降谷の話を右から左に流して味見をしていた萩と弟が殴られていた。因みに主な料理人は諸伏だというところが恐怖だった。
水道から綺麗なホースで竹に水を流し、終わりに皿をセットする。2個ずつ配ったかき揚げの余りは小戦争の結果、ピンクのそうめんを掴んだ人から取って行くスタイルで落ち着いた。

全員が全員、つかむ側に回りたいらしく、結局俺が適当に流すことになった。どさっと流してその間にボールに箸を突っ込んで食べる。情緒も何もないが、水の流れる光景が暑さを和らげるというのはあながち嘘ではないらしい。流すたびに歓声と悲鳴が聞けるのは愉悦に浸れる。愚かな人間どもにバレないようにそっとピンクのそうめんの偏りを激しくするなどして楽しく過ごした。

「まてよ、諸伏ピンク取りすぎだろ!?」
「製作者だから許せよ」
「訴える」
「ずりぃ、俺黄色しかねぇし!」
「偏り酷くねぇか」
「乱数やべぇ」
「ぜってぇ犯人上流で足組んでるあいつじゃん」
「名前サン感謝っす」
「こうなったら実力行使しかねぇな」

結果、竹が二本折れ5人が竹をとりに行った事を報告する。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -