仁義なき孫家の闘い!



ラディッツさんと結婚して、子供も産まれその成長を2人で見守りながら幸せに今を生きることができている。そんな生活に文句なんてない、むしろ、幸せすぎてこんなに幸せになっていいのかと思うくらいだ。

しかし、ある問題が1つ。ラディッツさんが頑として孫家、悟空さんや悟飯くん達と会おうとしないのだ。ラディッツさん自身、和解したと言っても実の弟を殺そうとしたことに、負い目を感じているのだろう。どんなに悟空さんが歩み寄ろうとしてもラディッツさんが身を引き、会おうとしない。私やダイとカイ(ラディッツさんとの子達)が孫一家と関わることを制限したりはしない。

だから、どこかでは悟空さんと血の繋がった兄弟としていたい、傷つけたくないと思っているのではないかと私は思った。


だから、息子と娘と力(物理)を合わせてラディッツさんと悟空さんの仲を取り持つことに決めたのだ。


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ソファに座り珈琲が入ったマグカップを傾けながら新聞を読むラディッツの様子を見ながら、時間を気にするトキハ。悟空達が来る時間が少しずつ迫る度にソワソワとしてしまう。それを見ていたラディッツは首をかしげながらも珈琲を啜る。そんな母親の様子を見ていた双子もハラハラしていた。

そのとき、『ピンポーン』とインターホンを鳴らしたベルの音が部屋に響く。ふと、顔を上げるラディッツと戦いのゴングが鳴ったと冷汗をかくトキハと双子。

「ら、ラディッツさん、今手が離せないので代わりに出てもらってもいいですか?」

「?そうか、わかった」

「お父さん、僕達も着いていく!」

「???あぁ、いいぞ」

ごく自然に促し、悟空と対面させる作戦はとりあえず上手くいったとほっと息をつく。ラディッツさんが悟空さんを嫌がって家に入れなくても、双子と悟天くんが仲良いからそのまま家の中へ案内するだろう……!それに伴って悟空さん一家も案内できるという作戦……!!特に問題は、ない、はず!!

意気揚々としながらやっぱり気になるトキハは壁からチラリと様子を伺う。何も知らないラディッツは玄関の扉を開ける。


「オッス!元気か兄ちゃ、」


バタン。


ラディッツは悟空の声がした瞬間にドアを閉めた。そして何も見なかったかのように平然としていた。その様子に双子だけでなくトキハも口を開けて呆然とした。まさかの事態に追いつけないトキハはフリーズしてしまうが、どうにか気を持ち直してラディッツへと駆け寄る。ハッ!した双子もラディッツに駆け寄る。

「ら、ラディッツさん…!そ、その!」

「…………………これはトキハが考えたことか」

「お父さん……!お母さんは悪くないの…!」

「そ、そうだよっ!父さんとゴクウおじさんが仲悪いから……っ仲良くしてもらおうと…っ!」

「余計なお世話だ、お前たちも部屋へ戻れ」

トキハやダイとカイが止めようと腕を掴むが取り付く島もなく、ラディッツは部屋へとツカツカと戻っていく。つもりのラディッツだったが掴まれた腕を振り払えず、トキハに向き直る。

「トキハ、腕を外せ。動けん」

「イヤです。ラディッツさんが悟空さんと会うまで離しません」

「…………ハァ、いいから離せ、って、おい!」

ぎゅうっと抱きついてラディッツの胸に顔をうずめるトキハを邪見にも出来ず抱きつかれたことに顔に熱が集まる。新婚でもないのにこんな姿を、息子たちの前で晒すなんてラディッツにとってはプライドが邪魔をして抱きしめ返すことも、払い除けることも出来ない(払い除けることなぞしないが…)。


「あんなことがあったけど、私は、ラディッツさんと一緒にいられて幸せなんです……この子達も生まれて、悟空さん達とも家族になれて、こんなに幸せをくれたラディッツさんに少しでも……幸せを返してあげたいんです……!」


「トキハ……オレも、お前といられて幸せだ。絶対に離さんぞ」

ポロポロと涙を零すトキハを抱き寄せる。愛した人と家族になり子供も生まれた。1人の女に骨抜きにされるなど、昔のオレは予想もしていなかっただろう。トキハを腕に閉じ込めて人の温かさ、家族の大切さを知ってしまえばもう二度と離さない。どんな強敵にも、この絆と温もりを壊させはしない。
抱きしめたトキハは、頼りなく、弱いはずなのに誰よりも強かった。

トキハがラディッツの背中に手を移動せると、どこからか『ぐすぐす』と鼻水をすするような音が聞こえてきた。


「良い奴だなぁ…トキハ」

「ラディッツが惚れるのも無理ないな。お前には勿体ない位のいい女だな」

「叔父さんとトキハさんが仲良くて良かったです…!」

「お、オヤジ………!に、カカロット!カカロットの息子まで…!!!!」


トキハの言葉にしみじみと呟く悟空、『うんうん』と頷きながら『オレの妻も最高の女だ』と惚けるバーダックに、ぐすぐすと泣く悟飯。息子達とはしゃぐ悟天とその場はラディッツにとって地獄だった。こんな所を知り合いどころか、身内に晒した挙句、甘ったるい言葉を吐いた所までバッチリ見られたのだ。プライドの高いラディッツにとっては今すぐ消え去りたい所か、最高出力のダブルサンデーでこの記憶ごと抹消してしまいたいが、この家諸共吹き飛んでしまうので洒落にならない。


『ぐぬぬ…っ!』と額のシワを深めながらどうにか気持ちを抑えようとしていると、トキハが腕の中からするりと抜けてカカロット達をリビングへと促す。おい、オレは良いと一言も言ってないぞ。

バーダックとカカロット達の案内を双子達に任せ、くるりと振り返るトキハ。


「ラディッツさん、大丈夫ですよ。ラディッツさんは大切な家族なんですから」

『それに、』と言葉を区切り、ラディッツへと手を差し伸べる。

「私もラディッツさんのこと愛してますし、私、ラディッツさんから離れる気はありませんからね」

「フッ…、オレも離すつもりはない毛頭ない。覚悟しておくんだな」


ラディッツの言葉に可憐な花のように微笑むトキハに、ラディッツ自身も優しく微笑む。トキハの腰を抱き密着する。トキハも恥ずかしがりながらもラディッツに身を預ける。

その光景から2人を取り巻く未来は明るくて、あたたかい。2人はもっとあたたかい家族が増えることへの幸せを噛み締めていた。






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オマケ


「来てもいいとは言ったが……!何故こうも頻繁に来る!!」

「いやぁ…トキハの飯が美味くて……」

「ついでにラディッツの顔を見にな」

「オレはついでか。おいオヤジ、トキハを変な目で見るな」

「変な目とはなんだ。ただお前の嫁を見守ってるだけだろ」

悟空は純粋にご飯目当てだろうが、どうもバーダックのトキハを見る目がニヤニヤとしているように見えてしまう。それはラディッツの思い違いである。トキハを思うがゆえの心配である。愛ゆえである。仕方ない。

「しかし、お互いギスギスしてたところにトキハという名の緩衝材が入っただけで家族に戻れるとは………恐るべしだな」


「………あいつはどんな相手だろうと心に入り込んで来る。その挙句、心を癒していく。古傷も、押し込めていた気持ちも全部受け止める。だから手放せなくなる………」

「兄ちゃん……、」

悟空とラディッツに生まれていた修復しきれないほどの溝も、トキハの働きかけによって今では自分たちの家を行き来するほどの仲にまでなった。トキハの影響力の強さを間近で感じ、敵味方関係なく人から好かれるトキハを心配になる。こんなに執着するとはラディッツ自身、驚いているが………


「ラディッツお前………、家族の前で惚けるな。胸焼けしそうだ…」

「!? なっ、ほ、惚けてなどいない……!」

「兄ちゃん顔が緩んでたぞ」

「なっ、?!ぐっ、…!カカロット貴様……っ!!」

「うわわっ!こ、こんな所で殴りかかろうとすんなよ…!あっぶねぇぞ!」


バタバタと部屋を駆け回る姿は、幼き頃に叶わなかった家族の姿を垣間見た。その光景は、ソファにゆるりと身体を預けていたバーダックの口端が柔らかく上がっていた。

キッチンで人数分の珈琲を入れるトキハの姿を一瞥した後、揉める2人の仲裁へと入っていくその姿は誰が見ても、微笑ましく仲の良い家族の日常の光景だった。





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