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▼ 荒縫いではあるけれど

あのあと本当に、レギュラスブラックからああだこうだと指摘を受け、資料を整理させられた。
周りの人間からはなんとも滑稽に映っただろうが、実際にブラックのピックアップしていった資料は的確で、普段よりも2分の1の速さで課題が終わったのだ。
これで次の勉強にとりかかれるので、素直に感謝の気持ちを告げる。
「ありがとう」

手伝い終わって、本を読んで座っていたブラックは、それから目をはなすつもりはないようだ。

「本当にどこからあんな資料持ってきているんですか。」

呆れたようにそう言った。
かわいくない。

レギュラスブラックは、シリウスの男前な顔立ちから粗暴さを取り除いて、上品をつけたしたような、似ているようで似てない顔立ちだ。
下級生で少し幼さの残るそれは随分と可愛らしくみえるが、中身は嫌味と皮肉の塊のようで、ド直球のシリウスとは違った憎らしさだ。

損な性格だなぁ。

なんとなく慣れてしまって、そんな冷静な感想が浮かんだ。

「悪いですね。おかげさまで早く済みましたよ。」

少し投げやりにそう告げて、羽根ペンの先を少し乱暴にインクへと突っ込み、羊皮紙の先が汚れた。

ブラックは変わりなく涼しい表情でゆったりと読書を続けていた。



その後提出した課題は今までで1番良い評価を貰えた。

それからというものの、私はブラックと一緒になる朝の時間には、机いっぱいに課題を広げて、小言が飛んでくるのを心待ちにしていた。

結果は大事だ。



「このトピックに関連するものは主に、薬草の育て方と、採取場所についてなので、図書番号が…」

「Hの5列だったかしら」

「そうです」

羊皮紙にさらさらとメモ書きを増やしていく。
あとは、朝食のあとに図書館でこれを借りれば良い。
満足して、顔をほころばせながらそれを眺める。

「…あなたは歳下に教えられて恥ずかしくないんですか」

いつものように小言をいうレギュラス−ブラックでは堅苦しいので呼び方を変えた−というより、ただただ不思議な物を見るような目でレギュラスは告げた。
あれから1週間程経てば随分と慣れたもので、これが彼の通常運転なのだと理解するようになった。

「優れた人に教えを乞うのが1番だと知ってるの。」

実際にレギュラスに教えて貰ったことで、ここ最近私のレポートはOしか取っていない。
ただのプライドが邪魔するほど余裕がある訳じゃないし。

「そうですか」

レギュラスはいつもの様にまた本へと目を向けた。

「あ」

急いでかき集めたメモ書きと教科書が手元からざぁっとなだれ落ちた。

「はぁ…あなた本当に…」

呆れたようにため息をついた彼は、本を閉じて、散乱したそれらを拾い集めた。

「ごめんね、ありがとう」

急いで彼の手元の教科書を取ろうと手を伸ばす。

「腕、どうしたんですか…?」

急いで手を伸ばしたせいで捲れ上がった腕は黄色く腫れていた。


「薬草学で腕に零しちゃって」
すぐに手をひっこめて、腕を撫で付けた。

「医務室、行ってませんよね」

黄色い腫れはとても薬を塗ったように見えなかったのだろう、鋭くレギュラスは言った。
たしかに私は医務室に行かなかった。

「失敗して怪我したなんて、先生に言いたくないの。」

口に出した馬鹿げた、子供のような言い訳に自分でも馬鹿らしく思った。
本当になさけないな。

「座っててください。」

ぐいと反対の腕を引っ張られて、有無を言わせぬ顔で私を座らせた。

灰色の瞳が鋭く、強く私を見つめたので、私は為す術もなく言われるがままにした。




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