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▼ 間抜けと悪魔の不協和音

間抜けと悪魔の不協和音

あれから私はシリウスを避けた。
シリウスが私に話しかけることは度々あったが、その度に隣にはあの女の子がいたので、私は、目を背けるようにすぐに話を切り上げて立ち去った。
彼女が当然のように、シリウスのそばにいるのを冷静に見過ごすことができなかったからだ。

談話室で、封をされた深緑色の手紙を開ける。
金色の薔薇模様の蝋でとめられたそれは私の家からの手紙だ。深いため息をつく。
内容はいつもと同じように、そろそろ始まる試験についてだった。
前回の成績では駄目だ、何時になったら首席を取れるのか、と綴られているソレに胃がキリキリとなるのを感じる。

前回の首席と次席は、ジェームズポッターとシリウスだった。
彼らがスリザリンに対する嫌がらせに身を投じている間、私は妨害されつつも全ての時間を勉強に注いだ。
苦手な数占いは、バーキンス先生とずっと居残り授業をしていた。
それでも私が首席をとれたことは1度としてなかった。

ずっと、彼らに嫉妬していた。
何にも囚われずに生きて、それでいて私の欲しいものをすべてかっさらって行く彼らが。
羨ましかった。
シリウスと一緒に過ごしたあの日は、私も彼らみたいにと、馬鹿な考えが浮かんでしまったんだ。

暖炉へと向かい、いつものように手紙に火をつける。
私の小さなストレス発散だ。
お母様からの手紙を燃やすなんて、不敬もいい所だ。その背徳感と焦げた匂いを吸い込んで、安心した。


「手紙を燃やすなんて、余程嫌な相手からですか。」
ふいに後ろから声が聞こえて身体を震わせた。

振り向くと、レギュラスブラックだった。

「家が嫌いなんですか。」

ブラックはそう淡々と告げた。バレンシア家の手紙だとバレていたようだ。

今日はなんだか敵意は感じなくて、身構えていた肩を下ろす。

「小さな意味の無い反抗よ。
嫌いなわけではなくて……息が詰まるだけ。」

最後の方は声が小さくて聞こえていたかはわからない。


なにか小言を言われるのかもしれないと身構えたが、彼は思いのほか興味がなさそうに小さくそうですか、と呟くと、そのままソファへと座った。

こないだの彼を思い浮かべたが、
そのまま特に彼は本を読んでいるだけのようで、私もそのまま元の場所へと腰を下ろした。

私は置いていた羽根ペンをもう一度手に取り、「古代魔法生物の生態変化について」のレポートにとりかかった。
魔法生物と生息範囲の関係の資料をどさりとのせる。
少しもの音が大きかったせいかブラックがこちらに視線をやった。

「ごめ…ん」

なんとなくこの場に会う言葉を手探って、出たのは情けない謝罪だった。
ブラックは灰色の瞳でこちらをじっとみつめた。彼に似て、すごく綺麗な瞳だ。

「あなたって本当になよなよしてますよね。見ててムカつきます。」

「え」

私は唐突の辛辣すぎる言葉に一瞬理解ができなかった。
ブラックは表情も変えずに淡々とそう告げた。
私ってもしかしてすごく失礼なことを言われた…?

「だいたいあなた資料選びがマニアックなんですよ。」

ブラックが少し呆れたような口調で机の上にのせた資料を物色し始めた。

貶されているのだろうか?
そして私は下級生に勉強のご指摘をいただいてるのは何故なのだろうか。

「要領が悪いんです、『魔法生物とマグルのドラゴン級伝説!』なんてこのレポートを書くには不適切に決まってる。」

「ず、随分と酷い言いようね!そんなに言うなら貴方がやってみればいいじゃない!下級生にはわからないでしょうけど。」

なにがきっかけか、堰を切ったように悪口を言われた私は、つい顔を赤くして、喧嘩を買ってしまった。(ブラックに売った意図があったかはわからない)

「いいですよ、できないと思われるのは心外ですから。」





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