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▼ 熱に溺れる

2話


規則正しい寝息で綺麗に眠っているトム・リドル。
2人掛けの広々としたソファの端で座ったまま寝ていた。
何故こんな所にあの有名なトム・リドルが…

彼の寝顔を1mほど離れた所から様子を伺う。

いまはもうとっくに消灯時間だ。
監督生であり、学校の特別功労賞を得た優等生のトム・リドルが何故ここにいるのかがレーベラには疑問だった。
それに彼の傍にあるテーブルの上には何本か開けたワインも転がっている。
彼がお酒を飲むとは意外だ。
しかも開けた瓶の数を見るとかなり飲んでいて、おそらく彼は酔いつぶれたのだろう。顔も赤い。
ますますあのトム・リドルであるか疑わしいが、その端正に整った顔はどこからどうみてもあのトム・リドルだ。


「うっ……」

レーベラが混乱する頭で思考していると、ふとうめき声が聞こえた。

先程まで気持ちよさそうに寝ていた彼が苦しそうに呻いている。

普段スキのない完璧なトム・リドルの珍しい様子になんとなく不安になってレーベラはそばに駆け寄る。

息が荒く、かおを赤くしたトム・リドルはだれにでも頼られる完璧な姿とは程遠く、弱々しく見えた。

すっと彼の額に手をやる。
先程まで寒い所にいたので、レーベラの手は人肌よりもすこし温度が低かった。
じわ、と手の先から熱が広がる。
指先に触れた熱は血液をめぐってじわりと私の体温を微かに上げた。
手の冷たさに心地好くなったのか彼の表情は少し和らぐ。

それにしても、綺麗な顔だ。長いまつ毛をおろした姿は見慣れない美しさだった。

「…ん」
じぃっとみつめていると、リドルがその瞼を上げた。
寝起きで微睡んだ瞳が私を映す。
即座に我に返ったレーベラは、その瞳に心臓が速くなるのを感じた。

「あ…ミスターリドル…えっと」

誤解だとか、偶然だとか、そもそも何故ここに貴方はいるのかなどと言うべき言葉が頭に浮かんでくるが、声には出ずに消えていく。
まだ彼の額においた手は一瞬で熱くなるのとは反対に、腹の底がひゅうっと冷えていくようだ。

「うるさい」

一瞬何が起こったのかわからなかった。
先程まで眠っていた人とは思えない力強さで、押し倒された。
倒れ込んだままリドルが退く気配はなく、顔を見上げると、
深い黒の瞳こちらをみつめていた。
それと反対に乱れた黒髪に、レーベラは冷静ではいられなかった。
「あの、リドル、ごめんなさ」
私がそう言いきることはできなかった。
彼によって口を塞がれたのだ。

「んっ…!?…ぅん」

いきなりのことにレーベラはされるがままにキスをされる。
腕は抑えられて、身体に乗られているので、完全に何も出来ない。

考える前に、彼のアルコールにどんどん、気が遠くなって行くのを感じた。

これが彼女にとっての初めてのキスであり、初めてのアルコールであった。










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