ふたりのはじまり

多分、オレらの歳でこんなこと考えてる奴って少ないんだと思う。正直、形式めいたものなんてどうでもいいと思ってるし。でもこの先、オレにはなまえしかいないし、ずっと一緒にいんだろなぁってのはぼんやりとあったことで。だったらべつ結婚してもしなくてもどっちでもいーんじゃねーのって。そう思ってたらこいつが急にこんなこと言いやがるから焦ってしまったと言われたら、否定は出来ない。指輪を用意してたとか、そんなめんどくせー質問は御免だ。まぁ今はその安物をまじまじと見ててくれよ。


「シカマルー、綺麗だね」
「そらよかったな」
「今死んでもいいとか思っちゃったよ」
「バカじゃねーの、」


死んだら結婚もクソもねーよと突っ込むと、冗談だよバカ!とけらけら笑うなまえが目に映り込む。ああ、でも少しだけ気持ちは分かるかも。


「わ、なにひとりでにやけてんの?気持ちわる」
「あ?にやけてねーし」
「嘘だー!変態みたいだったよ」
「他に言い方あるだろ、」


多分こん時のオレは、想像以上に浮かれてたんだと思う。あん時みたいに、








「中忍おめでとー!」
「バッ、やめろおまえ大声で」
「え?だってめでたいじゃん!同期初だよ!一号だよ!?」
「オレだって信じらんねーよ」
「シカマルの実力が認められたんだよ!すごいことだよ!」
「、まぁ。やるしかねーからな」
「あら、珍しい。めんどくさいって言わないの?」
「いまは、ナルトとかサスケとか色々大変そーだし。そうも言ってらんねーよ」
「、あぁ」


この話題は最近のオレらの周りではタブー。とまではいかないがみんなの顔が曇るのは必然だった。約一名、わんわん怒りを露わにする奴もいたが、まぁそれも心の奥の気持ちはみんなと同じってことで。


けどこいつは、悲しいっていうより心ここにあらずって感じ。


「おーい、どうした」
「…ん?べつー」
「あっそ、」


なまえの横顔を気付かれないように視線で追えば、少しだけ大人になった表情にギクリとしてしまう。ダメだオレ、頭わりぃ奴みてぇ。


「なぁ、」
「うん?」
「オレらは、かわんねーよな」
「…どういう、意味?」
「ナルトとサスケみたいに、なったりしねーよな」
「それは、」


一拍置いた間と、唾を飲み込む音が深刻さを物語る。なに聞いて、バカかオレは。


「あーなしなし、いまの話は終わりな」
「う、ん」


気まずそうにひきつったなまえの顔が、オレにはなによりの答えで。かわるもなにも、始まってさえいないオレたちがどうにかなるわけなんてねーんだ。


本当、バカだオレ。



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