ポケットの中身

忍辞めるとか、シカマルに劣等感持ってるとか色々言ったけど、どれも本音であって本心ではないような気がする。一番言いたかったことは、大切な人を守りたいってこと。その大切な人が私にとってはシカマルだってこと。それを今、伝えておかなきゃいけない気がしたんだ。なんでかは、分からないけど。


「えーと、シカマル?なんか言ってよ、」
「…は」


自分の薬指につけられた草輪をじっと見つめて動かなかった彼としばらくぶりに漸く目が合った。こんなに呆けた顔のシカマルを見るのは久しぶりな気がする。そうだ、いつだっけ。


「ああ思い出した」


つい、その懐かしい出来事を思い出して口元が緩むと、目の前にいる当の本人は顔をしかめる。


「なんの話?」
「んーん、こっちの話」
「、またかよ」
「え、なにが?」
「いや、最近みんなオレに隠し事多いんだけど」
「あー」
「なんだよ、おまえ知ってんの」
「さぁ」


目に見えてイラっとする彼を可愛く思えてしまう。恋は盲目とはよく言ったもんだ。


「付き合った時のこと思い出したんだよ」


私がそう言うと、シカマルはバツが悪くなったのかまた目線を逸らした。


「勘違いしてたもんねぇ」
「うるせー」


私が言う勘違いとは、誰にも話したことのない、きっとシカマルにとっては一生の汚点とも言えるものだろう。その時も、シカマルは今みたいにアホ面を見せた後で、私と目を合わせなくなったのだ。


「ねーシカマル、こっち向いてよ。てかなんか言ってよ」
「あー、ちょっと待て」
「もう結構待ってるんだけど」
「おまえさぁ、」


疲れた顔でため息を吐くシカマル。ごそごそとポケットに手を突っ込んで取りだしたものは、私が即興で作ったそれとは比べ物にならないくらいのキレイなやつで。


「え、うそ」
「こういうのは男からなんだよ、先にすんなって」
「な、に。これ」


私の問いかけには応えず、男のくせに細くて繊細な手で私の薬指にそれを付ける。ちょっと待って、手ぇ震える。


「結婚」
「ふぇ?」
「するか」


間の抜けた声がシカマルの耳に届くと、私の名前をゆっくり呼んで笑う。その笑顔を見て泣きそうになる私は、とんでもない幸せ者だと思う。




(なまえのバーカ)


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