ポカポカ陽気が気持ちいい昼下がり。ピクニックって単語を出した瞬間、思わず眉間に皺を寄せたシカマルだったけど、その後は何も言わず「じゃあ行くか」と。それだけ呟いた。
だだっ広い芝生に寝転んだ彼はいつものように白く流れる雲をぼんやりと眺める。私はその横顔を見ながら、じわじわと込み上げる目には見えないなにかと闘っているような気持ちになった。
「なぁ」
「ん?」
少し鼻にかかった聞き慣れた声を私の耳が捉える。呼び掛けたわりに次の言葉を待っても、なかなか言葉が紡がれることはない。
「え、なに?」
「…べつに」
「なによそれ」
「じゃあ聞くけどよ。おまえ話あんじゃねぇの?」
三白眼の小さな黒目が微妙に動いて、上目遣いで見上げてくる。シカマルの上目遣いなんて、睨みがききすぎた最強に目つきの悪いものなんだけど。
話、ね。確かにシカマルに話したいことがあった。それをわざわざ家で言わず、言うタイミングをずっと伺ってて、それでもなかなか喉から言葉が出てこないような、そんなめんどくさい話を私は隠し持っていた。シカマルが文句も言わずピクニックに付き合ってくれたのは、やっぱりなんでもお見通しってことなんだと思う。
「朝の話おぼえてる?」
「サスケ、のことか」
「…そう」
シカマルはふぅと一息吐いて、上半身だけゆっくりと起こした。一言、一言を間違わないように選りすぐって作る私の話に、無表情で耳を傾けてくれた。
「サスケの気持ちは分からなくもないけど、私はあんまりサスケ好きじゃないんだよね」
そう言うと、少しビックリしたのか困った表情を見せた。それでも話の腰を折ることはせず、手持ち無沙汰の右手でそこらへんの草をむしり始めた。
「劣等感ていう感情はタチ悪いんだよ」
「…」
「忍、このままじゃ続けられない」
「誰に劣等感持ってんだよ、」
「…シカ、あんたに」
頭の回転が早いシカマルには安易に予想できていた答えだと思う。だけど一瞬曇った彼の顔は、私の脳裏にひどく焼き付いてしまった。