夜王子と天邪鬼

朝起きると大好きな顔が目の前にあって、つい口が綻んだ。いつもより窮屈なほどに抱きしめられた体勢が、昨日の出来事を思い出させる。怖い夢はもう見なかった。あのあとは、なぜかネジが白タイツ履いて恥ずかしそうに木の葉をあるくという奇妙な夢だった。まあ、ある意味怖いけど。


「なに笑ってんだよ」
「あ、おはよう。いや昨日の夢ね」
「おまえの夢はくだんねーから聞くのめんどくせえ」
「違うんだって、ネジがね」
「あー腹減った」
「聞いてよ!」
「はいはい」
「もー!」


昨日の優しさはどこへやら!っていうのも正直、慣れっ子。シカマルはさぁ、やる気とか優しさとか陽の性質っていうの?そういうのあんまり出したがらない。ただ唯一、世が暗くなる夜にだけ、シカマルは陽の気を表しやすくなる。この歳でまだ恥ずかしがり屋さんなのかしらね。かくいう私も、自己分析するからにひねくれ者であることは間違いない。任務中は恋人っぽい雰囲気なんてある訳ないし、むしろ見せたくなんかない。同期のみんなでいる時だって私たちの間に甘さなんてもんは皆無だ。私もシカマルもそういうのが嫌いだ。


だから私たちが恋人同士っぽくなるのって、夜、寝る時ぐらいなもんかもしれない。乙姫と彦星もびっくりの一日七夕を実施し続けているようだ。


先に起きてコーヒーを淹れてくれるような日常。香ばしい匂いに癒されながら、当たり前になっている優しさにも感謝しないといけないなってちょっと思った。だけど今はお日様が眩しい朝。素直になるにはまだ難しい、


「メシできたぞ。つってもパンだけど」
「今起きるー」(いつも、ありがと)


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