銀髪も白髪もだいたい一緒

※完全にifです。本編には繋がっていません。



「おーい銀の字。これ見ろこれ。タイムマシン作っちまった」


まーた始まりやがった。定期的に立ち寄るからくり堂『源外庵』で行われる新作発表会もといガラクタの展覧会。今回はドラ○もんよろしくタイムマシンなんてもんを作りやがったらしい。それがほんとならやべーよこのジジイ。カラクリの説明を始めるジジイを無視して半信半疑でガチャガチャと謎のバーをいじっていればブゥンなんて起動音が聞こえてカラクリからアラート音のようなものがビービー鳴り響いている。あれ?ヤバくね?と振り返ればジジイは悦に入った様子で鼻息荒くカラクリの説明をしている。誰も説明なんて聞いちゃねーのにこの異音聞こえてねえのか?
「オイ!ジジイ!なんか変な音してんぞこれ!大丈夫なのか?!」
そう叫んだ瞬間、目を開けていられないほどの閃光に包まれた。




閃光が落ち着きゆっくり瞼を開けば、恐ろしい高さのビルが所狭しに立ち並ぶまるでジャンプに連載されてそうな未来都市のような世界が目に飛び込んできて思わず人目も憚らず叫ぶ。



「なんじゃぁこりゃあああああああ!!!!」



凄まじい人混みの中立ち止まったコスプレをしているような男が叫びだし、不審な目をいくつも向けられるが特にそれ以上人々は反応することなく己の目的地に向かってスタスタと歩いていく。震えながらきょろきょろとあたりを伺う銀髪の男ー、坂田銀時は己の脳のキャパシティを超える現状に思わず頭を抱えた。


「あんっのクソジジィまじでやりやがったのか?これタイムスリップしてね?嘘だよね?誰か嘘だって言ってよ神楽〜!新八〜銀さんここだよ〜〜!!出っておいで〜〜!!!!!」


もちろん彼が叫ぶ人物はこの世界にはいない人間なので返事はない。代わりに見慣れぬ衣服を着た行き交う人々の視線が鋭くなっただけだった。余りにぶつけられる鋭い視線にハッとした銀時はぼーっと突っ立ってるだけでは何も変わらない現状にひとまず人の流れに乗って進むことにした。
どれくらい歩いたか定かではないが、どこまで歩いても人の波が減らない。どこを歩いても江戸にいた人間の数十倍の人々が闊歩する道に銀時は辟易としていた。さらに言えば、時たま現れる薄ぼんやりとしたお化けみたいな妖怪みたいな宙に浮く存在が恐ろしくて仕方がない。俺、タイムスリップしてお化け見える身体になっちまったの?涙どころかションベンまで垂れそうだった。


「どーすんだよコレどーすんだよコレェェ!!俺帰れるの?!帰れるよねえ!?こんなわけわかんない時代に放り出されてもどうしたらいいのオオオオ」


遂には頭を抱えて蹲る。どれだけ歩いても元の時代に戻れる気配がない、八方塞がりである。誰でもいいから助けて、新八のことをこれからメガネなんて呼んだりしないし神楽のことをゲロインなんて呼んだりもしない。一生感謝するから頼むから助けて、銀時は心の中で叫んだ。



「あんれ?五条がコスプレでもしてんのかと思ったら違う人?あなた大丈夫?」


頭上からかけられた鈴の鳴るような軽やかな声にハッと抱えてた頭をあげれば、どこかで見たことのある番傘を差した女が自分を見下げていた。近くにいたバケモンを小刀でなんでもないように霧散させながら。え、なに?この子神楽の兄貴のとこの夜兎の子だよね?あのバケモン怖くないの?むしろなんで平気な顔して触れれんの?ていうかアレやっぱ存在してんの?!あばばばばば夜兎って非科学的なもんまで殺れんの?スッゲーな!!!なんてことを考えていれば女は己の顔を訝しげに「んん?」と顔を近づけてまじまじと視線を彷徨わせる。


「あなたまさか、吉原にいたお侍さん?」


誰でもいいから助けてつったけど名前も知らねえ春雨の一員(多分)だし知り合いと言えるのかもわからないが、ひとまずはこのわけのわからん時代で元の時代に繋がる唯一の手がかりかつあの気色悪いバケモンを倒せる存在。恥を捨てぎゅっと目の前の女の手を握って正座をしながら懇願した。


「一生のお願いです、助けてください」


へ?と目を丸める女に「あんたもこの時代に飛ばされたんだよな?」と言えばパチクリと目を瞬かせ、「あなたも呪霊に飲み込まれたの?」と宣った。なんだ?ジュレイって?飲み込まれた?俺が飲み込まれたのはクソジジィが作りやがったカラクリだ。



「さっき私が倒したようなやつ。視えてる?」
「やっぱアレ実在してんの?!ヤダヤダ銀さんあーいうのは信じないことにしてんの。おばけなんてなーいさ!おばけなんてうっそさ!ホラ!アンタも歌って歌って!!」
「いや、いるから。残念だけど。私アレ祓って生活してんの今」
「エエエエ夜兎が霊媒師?!転職するにしても他にあるだろ!!」
「んー、霊媒師じゃなくて呪術師なんだけど」
「呪術師ィ〜?!?!なんか聞いたことあんぞそれ!…アッ!最近ジャンプで連載始まったルーキーがなんかそんなやつだったような…なんだっけかー、じゅ…じゅ…、あ、そうだそうだ!呪術廻戦だろそれェェ!ジュレイってまさか呪霊か?!そうなのか?!?最悪だァァア!よりにもよってあんの気持ち悪いバケモンでてくる漫画じゃねェかァァ!嘘!もしかしなくても俺ジャンプの別の漫画にトリップしたのォ?!主人公がいなくなった銀魂どうなんの!ねェどうなんの!!??」
「ふふ、何言ってるか全く意味わかんない。お侍さん面白いね。私はなまえ、お侍さんの名前は?」
「…笑い事じゃねーよ……坂田銀時、銀さんでも銀ちゃんでも好きに呼んでくれや」
「銀ちゃんね。さ、立ってよ、まさかこっちで『地球の侍』に会えるなんて思ってなかったよ。嬉しいな」


味方ができたはずなのにちっとも状況が好転したと思えない。地面に座り込んでいた俺を引っ張り上げて腕を引っ張っていくニコニコした夜兎の女ーなまえに悪い気はしないのでされるがままにしていれば目をキラキラと輝かせたなまえが矢継ぎ早に質問を飛ばしてくる。



「銀ちゃんどうやってきたの?呪霊に食われたんじゃないの?」
「呪霊に食われるってなに?お前そんな方法でこっちきたの?ヤベーな」
「そうそ、春雨の任務中に襲われてさー参った参った!」
「俺は知り合いのカラクリ弄ってたら気づいたらここにだなァ」
「へー、そうなんだ、もしかしたら私たちみたいに飛ばされるやつっているのかもしれないね」
「な、ナァさっき呪術師つったけどお前あの漫画みたいにヤベー技使えたりすんの?!」
「ヤベー技?術式のこと?」
「それそれ!」
「?私は使えないけど銀ちゃんなんで術式とか呪術師知ってんの?」
「なんでってコレ呪術廻戦の世界だろ?」
「ジュジュツカイセン????」



なにそれ?とでも言いたげな怪訝な顔をするこいつにあージャンプ読んだことねえんだな。可哀想に。人生半分以上損してやがんな、とまで考えて口を開こうと思った瞬間悍ましい殺気を感じて思わずなまえを庇って腰に下げた木刀を掴む。



「なまえ、その男何」



恐ろしく美形な男が黒いサングラス越しに見える碧眼に怒りを携え己を睨みつけている。自分より遥かに高いその背丈は江戸ではなかなかお目にかからない長身だ。どうやら隣の女の知り合いらしい、横にいるなまえを見ればヘラヘラと笑って「あ、五条だ〜〜」なんて言いながら男を指刺している。
男の様子を見てなんとなく状況を察して木刀から手を離しやんわりなまえに掴まれた腕を解こうとするもさすが夜兎。びくともしねェ。それを見た五条と呼ばれた男がさらに額に青筋を浮かべているー、ん?五条?


「なにしてんの?浮気?」
「浮気って何。ウケるんだけど」
「お前白髪フェチなの?似たような髪型の男連れやがって」
「そうそう、最初五条がコスプレかなんかしてるのかと思ったんだよね〜」
「は???全然違うだろーが目ェ腐ってんの?こんな天パと一緒にすんな」


いや…失礼か!!!!天パの何が悪ぃってんだ!!それに白髪じゃねえ!銀髪だ!!!お前こそ目ぇ見えてんのか!銀さんだってイケメン枠でやらせてもらってますううう!!なんなら主人公やらせてもらってますうう!!
お前主人公の先生と同じ苗字なだけのモブだろ!!!
俺の知ってる五条は少年漫画特有の目元隠しがちなセルフ目隠し野郎だけだ!お前みたいな柄の悪いヤンキーみたいな男漫画にいなかったもんねーー!!ザマァみろ!



「そうそう、銀ちゃん私の世界からきたんだよね。五条六眼でなんかわかる?」
「はー?なんで俺がこんな得体の知れない男のこと見なきゃいけないワケ?てかお前いつまでその男の腕掴んでんの?名前も!!俺のことも悟って呼べよ!!!」
「えー、だって銀ちゃん困ってるんだよ?可哀想じゃん」



りくがん???アレ????りくがんって六眼?例のセルフ目隠し野郎のキラキラおめめの六眼??つか今こいつ自分のこと悟つった?あれ?五条の悟っつー奴なんて一人しか知らねェけど。六眼チート持ってる自称最強の五条の悟なんて二人以上いてたまるか。ジロジロとこちらを上から下まで訝しげに視線を動かす男をじーっと見つめるが俺の知ってる五条とは髪色こそ同じだがやはり似ても似つかない。そもそも制服みたいなの着てるし。ー制服?アレアレアレその制服どっかで見たことあんぞ…アッ…もしやこれジャンプ軸じゃない???あ、嘘。なんかなんとなくわかってきた。うわまじか。



「クロスオーバーしちゃってんじゃないのオオオオ」
「?!びっくりした!何急に!」
「なまえちゃんんんん!お馬鹿!おまっ、お馬鹿!!何銀魂キャラが主要キャラの過去に絡んじまってんの!!!ダメでしょ!帰ってきなさい!いい子だから地球に帰ってきなさい!」


掴まれた腕を解いて肩を掴んでガクガクと揺さぶればされるがままのなまえが能天気に笑っている。



「銀ちゃん何言ってんの?そもそも私地球人じゃないから」
「もおおおおそういうのはいいから!キャラの過去勝手にねじ曲げちゃダメでしょ!メッ!」
「んんん?話が見えないんですけど」
「おいオッサン。何こいつのこと勝手に連れ帰ろうとしてんの。その手離してそいつ返せよ」
「だぁぁぁれがオッサンだァコノヤロー。原作軸のお前より若ぇわ!!!」
「銀ちゃん銀ちゃん。意味わかんないからちゃんとわかる言葉で喋って??」
「おいなまえ。コイツ呪力纏ってんぞ。時間経過でどんどんなくなってるけど。こいつなんか変な呪物、いや呪具か?使った?」
「え?そうなの?だから呪霊見えてたのかな?銀ちゃん向こうでなんかカラクリ弄ってたって言ったよね?それかな?」



五条悟(仮)の話にピタリと動きを止めここまできた経緯を反芻する。思い当たるのはあのジジイのカラクリしかなかった。
あんのジジイついに呪具作りやがったのか…???タイムマシンよりヤベーじゃねえか。おい、まてまて。さすがにあのジジイでも呪具作んのは無理だろ!…無理、だよな???誰か無理だって言って!!!バカヤロー!!!!!


「時間たちゃ元に戻るんじゃね?もうすぐ呪力なくなる」
「ほんと?よかったねえ!銀ちゃん!」
「あ、あぁ…」


なまえがハイタッチのような手振りで両手を突き出してきたのでつられて両手を出せばパチン、と音がなる事はなくなまえの両手が五条悟(仮)の手に攫われていった。え、何。ガチじゃん。めっちゃこの子のこと好きじゃん五条悟(仮)。いいの?!大丈夫なの?!五条悟(仮)銀魂の夜兎に心奪われてっけど大丈夫なの?!ていうか五条悟マジでそんなキャラだった?!違うよね?俺の知ってる五条悟と目の前の五条悟(仮)が一致しないよ?!「なんでお前はすぐフラフラどっかいくんだよ」「えー、なんで五条に私の行き先いちいち言わないといけないの?」「お前この天パについて元の世界に帰ろうとしてたとかじゃないよな?」「天パじゃなくて銀ちゃんだよ」「は???だから何でそんな親しげな呼び方なの」「もーうるさいな」……もう誰も銀さんのことなんて見えてないよ。何なの。何を見せられにきたの俺は。はー、ため息をついて足元を見れば自分の足元が透けている。は?!透けてる?!?!



「とっとと一人で元の世界に帰りやがれ天パ野郎」


目ん玉をひん剥き、長い舌をこれ見よがしに見せつける腹の立つ顔をしながらサムズダウンする男にさすがの大人の銀さんもちょーっと腹が立ってしまう。



「なまえちゃん、嫉妬深い男はやめとけよもっと大人で器のデカイ男がいい。銀さんみたいな。そいつは大人になってもろくな人間にならねェ」
「ははっ、ホントだねえ!」
「なまえ!!!!」
「もー、ほんっとうるさい五条黙ってて」
きっと睨みつけるなまえにぐぅ、と眉間に皺を寄せて押し黙ってしまった五条悟(仮)。へー、結構尻に敷かれてんだな。
「銀ちゃん、帰れてね、もし神威と阿伏兎に会うことあったら、『なまえは元気に生きてた』って伝えてくれない?」
「!戻る気は、ねぇんだな」
「うん。私はこっちで生きてくよ!」


女の満面の笑みに仕方ねえな、と返せば既に己の体はほとんど透けている。神楽の兄貴か。まァいつか会うこともあるだろう。得体の知れねぇ世界でバケモン退治してもらった恩もある。「助かったわ」とだけ告げれば「どういたしまして」とニコニコする夜兎娘にベーっと舌を突き出す男。くっ…コイツ…!絶対人気投票でお前にだけは投票なんてしてやらねーからなと誓って、数刻前に感じたような眩い光にまた目を閉じれば、数秒後には懐かしい匂いが鼻腔をくすぐったーーーー。





「あーあ、行っちゃったな」



少し残念そうに呟けば、背中から包み込むように抱きつく五条の顎が脳天をぐりぐりと刺激してきてまあまあ痛い。元の世界の人間に会えるだなんて思ってなかったから少しだけはしゃいでしまった。ー坂田銀時。神威が目をつけるだけあって面白い人だったなぁとクスリと笑えば後ろの男の機嫌がより悪くなったのを気配で感じる。



「まだ拗ねてんの?」
「……俺って器小さい?」
「えー、わかんない考えたことないし」
「あの天パより俺の方が絶対いい男。あいつ絶対金ないね」
「なにそれ」
「ご飯お腹いっぱい食べさせられんのは俺の方だよ」
「それは魅力的だ!私ねー餃子と炒飯食べたいなー」
「!いつもんとこ?」


そう言って私を拘束していた腕をほどいてするりと指と指を絡め取られる。それを握り返せば先ほどまで拗ねていた表情はどこへ行ったのか柔らかく笑う五条と何度目かわからない馴染みとなりつつあった中華料理屋まで歩き始めた。





おだ様、今回は企画へのご参加ありがとうございました!せっかくリクエストくださったのに、サーバーダウンや移転等でバタバタしてしまい、ご迷惑をおかけしました。
さて、今回のリクエストですが、銀さん呪術世界にやってくるということで、銀魂世界のジャンプにも呪術があったら、という体で書かせていただきました!時空の歪みでこの後から銀魂世界のジャンプに夜兎主出てくるかもしれないし、出てこないかもしれない。笑
ifということで分かりやすいように呼び方は本編の番外編とは違う呼び方にさせていただきました!素敵なリクエストありがとうございます。楽しんでくださればいいのですが…!今後とも闇い夜に〜と驟雨をよろしくお願いいたします。


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