あいすみるくを一杯。


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前髪から始まるストーリー

俺は今、とっっっても不機嫌だ。
浜「おはよー霧野!…って、ブッ!!」
速「どうしたんですか、浜野くん?
  人を見て笑うなんて…えっ!?」
浜野は床で笑い転げ、速水も堪えているが目が笑っている。
倉「何だよ、朝っぱらからうるせぇーな…」
眠たそうに教室に入って来た倉間も、俺を見るなり笑い出す。
倉「なんだそれっ!!」
浜「ちゅーか短すぎじゃね?」
二人の言葉が槍のように突き刺さる。
怒りと恥ずかしさが沸点を迎える寸前、
神童がやって来た。
俺はまた笑われると頭を抱えた時、
神「あ、霧野。前髪切ったんだな」
霧「え、あ、そうなんだ。…笑わないのか?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
すると思いもよらない答えが返ってきた。
神「何でだ?こんなに似合ってるじゃないか」
その時、俺には神童が天使に見えた。
なんて輝かしいのだろう。
なんて美しいのだろう。
俺は思わず手をとった。
霧「ありがとう神童!
  そう言ってくれるのはお前だけだよ!!」
神「そうなのか?」
照れくさそうに笑う顔が愛らしい。
神童と巡り逢えてよかったと心から思った。

俺の前髪は、眉毛の少し上までしかない。
今、女子に流行りのオン・ザ・眉らしい。
そのせいか、いつもより男子からも女子からも
潤いある瞳で見られる。
目線に気を取られ、授業に集中できない。
神「…大丈夫か?」
あまりに落ち着きがないため、神童が声をかけてくれた。
霧「あ、あぁ…」
神「そんなに可愛いんだもん、みんなが見たがるのも当然だよな」
霧「ッ!///」
さらっとこんなセリフ言えるなんて尊敬できる。
こんなの言われたら、誰だって落ちるだろう。
可愛い、だって?
それはお前だよ、神童!…なんて言えないから、心の奥にしまう。
神「…でも、あんまり見せたくないかなぁ」
えへへ、と照れ笑いする神童を抱きしめたい衝動に駆られたが、
今の関係を壊したく無いから必死にこらえた。

一限目の終わりのチャイムが鳴り
ほっとしていると、後ろから声をかけられた。
神「ちょっと一緒に来てくれ」と言うので
ついて行くと、人気のない廊下に出た。
何だろうと神童を見る。
すると−
チュッ。
柔らかな感触が唇から伝わる。
痺れるような刺激が脳を走った。
霧「えっ…?」
俺は確かめるように唇をなぞった。
あの神童が、俺に…?
神「あ、あのっ、えーっと…」
神童は頭から湯気が出そうなくらい赤くなっている。
神「ごめんっ!!」
走り去ろうとする神童の腕を、
俺は無意識に掴んでいた。
神「ほぇ…?」
神童は今にも泣き出しそうだ。
そんな神童も可愛いよ?
霧「あのさぁ、ちゃんと説明してくれない?」
あぁ、どうしよう。
俺のSスイッチがカチッと音がした。
神「ぇ、ぇと…我慢できなくて…」
霧「どうして?」
神「その、あんまりにも霧野が可愛かったから…」
触れている所が熱い。
あぁなんか、このまま溶けちゃいそうだな。
霧「俺も神童のこと、好きだよ」
神「ッ…!///」
神童は恥ずかしくて目を逸らす。
霧「ねぇ、こっち向いてよ。好きなんでしょ?」
黙って素直にこちらを向く。
神童が俺をそんな顔で見るから、
そういう気分になっちゃったじゃないか。
霧「お返しだよ」
そう言って軽く口付けをした。
神「は…っ!?」
俺は真っ赤になった神童をそっと抱きしめた。
そして腰にスルリと手を回す。
神「ひゃっ!」
そのまま−

しかし。
二限目の始まりのチャイムが鳴り、はっと我に返った。
霧「あっ…」
自分が何をしようとしたか悟り、
とてつもない恥ずかしさに誘われた。
今度は俺が逃げ出したくなった。
その時。
神「き、霧野…教室、戻ろっか」
霧「う、ん」
あれ、忘れたフリする気か?
そう思ったけれど、
神「俺のこと、好きって…本当だよな?」
霧「えっ、あ、うん…」
そのまま俺達は黙って廊下を歩いていく。
神「…じゃあ、付き合ってくれないか?」
ん、何だろう。
今聞こえたのは幻聴か?
あまりに嬉しくて、何がなんだかわからなくなった。
神「あ、いやっ、今のは忘れてくれ!」
霧「いいよ」
神「え…いいの?」
驚いているような、喜んでいるような、
色んな感情が混ざった神童の顔は実に変だった。
だけどそれさえも、俺には可愛いと思えた。
霧「ほら、泣いてるとまたからかわれるぞ!
  早く教室行こうぜ!!」
神「あ、あぁ!」
俺は神童の手を引いて、教室へ向かった。

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