あいすみるくを一杯。


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夕焼けに染まる貴方は、とても美しい

「おーっはよ!」
教室に入ると、いきなりかけられた大きな挨拶に、寝ぼけた俺はどこかへ消えた。
「ったく、朝っぱらからなんだよぉ…」
「倉間くん、今日は何の日だか知ってますか?」
「さぁ…?」
「お前の誕生日だろっ!」
「あぁ、そういえば…」
「誕生日おめでとう(ございます)!」
そう言って渡されたのは、パンダのぬいぐるみだった。
(うっわかわいい…)
うっかり口に出しそうになるが、急いで呑み込む。
こんなこと言ったら、死ぬまでからかわれそうだから。
でも一応、ありがとうだけは言っておいた。
…あいつら、すっごいニヤニヤしてたけど。

それから色んな人にプレゼントを貰ったけれど、南沢さんからだけは何も無かった。
どうせくれないだろう、と思っていたけれど、本当に何も無いとこんなにも悲しいのか。
心のどこかで期待していた自分が恥ずかしかった。

部活も終わり帰る準備をする。
みんなからのプレゼントを眺めて、またため息をつく。
「何でため息なんかついてんだよ、変な奴」
びっくりして後ろを振り返ると、そこにはケラケラ笑う先輩が立っていた。
「南沢さん…」
「ほら、早く準備しろよ。帰るぞ」
「あ、はい」
色んな感情が飛びかって壊れそうだった。
スキとキライが交差する。
俺は混乱したまま、帰路についた。

何でプレゼントくれないんですか、と聞きたいけれど聞けるわけがなく、2人とも無言で歩く。
「倉間…」
急にそう呼び止めた声は小さく、確かに震えていた。
どうしたんだろうと振り返ると、夕焼けに紅く光る南沢さんの髪が近くにあって。
何事かと確認しようとすると、唇の柔らかな感触が伝わってきた。
暖かな光に包まれていく。
心地があまりにも良くて、一瞬天国かと錯覚する。
このままずっとこうしていたいような温もりに、そろそろさよならしなくてはいけない。
だんだん頭の中が整理されていき、南沢さんは唇を離した。

いつもなら怒っていただろう。
だけど今日は、とてもそんな気分じゃなかった。
「誕生日…おめでとう」
そう言った南沢さんの顔は、美しく、安らかな幸福に満ちていた。
ポケットから出した手には何か握られている。
すっ、と長い指で小さな箱を開けると、中にはガラスで出来た指輪が入っていた。
「本物は高すぎて買えなかったんだ…」
はにかむ笑顔にそんなものは要らないと告げて、
俺は南沢さんに抱きついた。
「一生、俺がお前を守るから」
俺には大好きなんてとても言えそうに無いから
「だいっきらい…」
とだけ言った。
南沢さんは優しく抱きしめ返す。
「いつかは大好きって言って欲しいな」
そんな優しく言われたら、いつか言っちゃうかもしれない。
体が夕焼けに溶けて1つになっていく。
そんなことを思いながら、しばし幸福に浸っていた。


*.。.*゚*.。.*゚*.。.*゚*.。.*゚*.。.*゚*

あとがき

中学生が、しかも男子が指輪なんてあげませんよね
なぜ書いている途中に気付かなかったのか…
まぁ、幸せそうな南倉に免じて
許してください( ˘ω˘ )

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