あいすみるくを一杯。


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純情スカート+@

ジリジリと這い寄る暑さに嫌気がさして、休日だっていうのに朝の6時に目が覚めた。
何もすることがないから、俺は街へ繰り出した。

「…ったく、暑すぎて頭がおかしくなりそうだ」
世の中は今日も平和で平凡だ。
何が面白いのかわからないのに、みんな見掛けだけの笑顔を貼り付けている。
流行に流され、色んな色に染まった世界は、まるでガラクタだ。

だけど。
俺のつまらない見方は、刹那にして変わった。
白い透き通った肌に蒼い瞳、くるんと少しはねた髪。
そして太い優しげな眉毛。
しばらく眺めていると、視線が合った。
俺は我に返り視線を逸らそうとすると、彼女はにっこりと笑ってみせる。
その一寸狂わず綺麗に整えられた笑顔は、見事に周囲の獣達を撃ちぬいた。

モノクロな彼女は、新しい色の中を颯爽と去って行く。
追いかけようと指を伸ばすけれど、決して届くことはない。
それに純情で無垢な塊に少しでも触ると、汚れてしまう気がして怖かった。

もしいつか生まれ変われるなら、俺はあの名前も知らない彼女に会えるだろうか。
だけど出会った瞬間に、俺の心を全て捧げてしまうだろう。
その時は、きっと彼女の手で殺めてほしい-。

そんなことばかり考えてしまうから、俺は自分の頬に平手打ちをした。
しっかりしろ。あれは幻だ。
そう聞かせながらカフェに立ち寄る。
すると、吸い付けられたかのように彼女が静かに座っていた。
テーブル席に1人で。
声をかけようか必死で考えていると、彼女はこちらに気付き手を振る。
俺も振りかえして席に着く。
適当にアイスコーヒーを頼み、俺達はしばらく話すことにした。

「俺は風丸。君、名前何て言うの?」
「吹雪って言うんです」
相変わらず綺麗な笑顔を浮かべている。
「ホント…綺麗だね…」
「えっ?」
思わず感嘆の声が漏れてしまった。
「あっ、いや…、今のは忘れて!」
「別にそんな焦らなくても…」
しまった。完全におかしい人だと思われた。
「お世辞でも嬉しいです」
ん、助かった?
少し安心していたら、思いもよらない言葉を彼女はくれた。
「風丸さんって面白い方ですね」
フフ、と手を口にあて笑っている。
「あはは…、そんなんじゃないよ」
「それに堅実で良い方」
静かな目でそう言った。
冷たい訳ではなく、何かを見据えた瞳で。

俺、今人生で1番幸せだ。
吹雪さんに褒められて。
それに、こんなにべた褒めされたことなんて、今まで一度もなかった。
しばし喜びに浸っていると、あっという間に時間は過ぎ夕暮れになっていた。
「今日はありがとう。とても楽しかったよ」
「こちらこそ、風丸さんとお話できてよかったです」
俺達はそこで別れた。

もう、二度と会えないと予感しながら-

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