オフィスセックス


「こんな時間まで残って仕事なんて、Aくんも大変ですね」
自分のデスクで書類と睨めっこしているAを見て、Bは笑いながらそう言った。
夜遅くのオフィスで思わぬ顔と出くわし、Aは軽く驚く。
「Bくんこそなんだ、忘れ物でもしたのか?」
Bはキャスターがついた椅子をわざわざAのデスクの前まで移動させる。
「まーさか、Aくんのそのしかめっ面覗きに来たんですよ。一人の夜はつまらなくってしょうがないでしょ、」
椅子を前後逆に座ったBは、背もたれの上に両腕を乗せ、Aの顔をじっと見つめた。
「お互いに」
AはBの狡い笑顔を見て少しムラッとした。
誤魔化すように咳払いをして、書類に視線を戻す。
「悪いが相手をしてる暇はない」
「息抜きくらい必要ですよ」
「集中してるんだ、誘惑するな」
「誘惑してるのはAくんの方ですよ」
「なに?」
せっかく視界から消そうとしていたのに、Aは思わずBを見た。
Bはゆっくり立ち上がると、デスクの横を通り、Aの方へと回り込む。
「スーツをきっちり着て仕事に集中しているあんたは隙がなくて色気がある」
Bは肘置きに置かれたAの腕を指で肩の方へとなぞり上げる。
「ムラムラしてきちゃうんですよ」
BはAの肩から首、輪郭へと指を移動させて、Aの顎に触れそっと上を向かせると閉じられた唇へ一方的に口付けた。
「…」
応えてくれない唇を、Bは寂しそうにぺろ、と舐めた。
「Aくん、俺はあんたに抱いて欲しい…」
「…」
Aは何も言わずにBを見つめた。
分かりやすくBの話に乗る姿を見せたくはないが、断りたくもなかったのだ。
拒否しないAの反応を、Bはイエスと取ってAの上へ座った。
男二人を乗せた椅子がぎしっと小さく音を立てる。
黙ったままBがキスをすると、Aも今度はゆっくりとそれに応えた。
Bからの一方的だったキスはだんだんと二人の欲望へと変わり、お互い唇を重ね合う。
Bの背景には普段皆が仕事をしているオフィスがあって、Aは変な心持ちがした。
二人がオフィスでこんなことをするのは今夜が初めてなのだ。
BはAの唇や舌の動きに、どんどんと気が昂ぶっていく。
「Aくん…、っ、」
優しく、激しく、二人は唇を求め合った。
AはBの服の中へ手を滑らし、熱い肌を撫でる。
Aが自分に触れてくれる、それだけのことがBの心を満たしていく。
「はぁ…ッ」
Bの息の熱さを感じて、Aは自分がすっかり流されてしまったことに呆れながら反省した。


「あッ…、っ、んぁ…ッ、はぁ、っ、ぁぁ、」
デスクの上に広げていた書類は、Bの背中に潰され皺を作る。
いつも仕事をしている場所で男を抱いていることに、Aは後ろめたさと興奮を同時に感じた。
自分のデスクに寝かされ身を捩るBの姿は、ベッドの中よりも卑猥に見える。
「ぁ、っ、は、ぁぁ…ッ」
Bも興奮しているのか、アナルがぎゅうぎゅうとAのペニスを締めつける。
「何をそんなに喜んでるんだ、Bくん」
AはBの脚を掴み、腰を動かしながら訊いた。
Bは悩ましげな顔をしつつも、口の端を上げて余裕があるように見せかけようと笑う。
「だっ、ぁ、て…ッ、あんたのちんこ硬くて、ぁ、っ、堪んないんですもん」
「…」
「はぁっ、それに、こっからの景色、やっぱ最高です、」
BはAのネクタイを掴んで引っ張った。
「ぁ、んっ…、やっぱ、っ、スーツが一番、似合ってる…、」
「脱ぎたいんだが」
「ダメ、もったいない」
Bは揺さぶられながら、下からAをじっと見つめた。
「はぁ…、はぁ…っ、Aくん、今度から…、ここで俺を抱いたこと…、仕事中に思い出してくれます?…ッ」
「…こんなことをして思い出さないわけないだろ。きっと毎日、今夜の自分を恨むだろうよ」
Aはそれだけ言うと、おしゃべりなBから言葉を奪い取るつもりで、激しく突き上げた。
Bの体がびくんっと反応する。
「あっあっ!やっ、Aくん…ッ!ぅあ、っ、あぁ…ッ!」
「…」
「んっ、んん、あっ、あっ、あぁ…っ!Aくんっ、あぅ、あっ、あぁ…っ!激し、い…っ!」
AはBに身を寄せ、汗が滲んでいるBの首や鎖骨を舐める。
「Aくんっ、あっ、ぁんっ、Aくん…っ!」
BはAの頭を撫で、脚を体に絡ませる。
「あっ、あぁっ、Aくん…、お、願ぃ…、あぁっ、好きって、言って…、こ、この場を、盛り上げるためだけで、いいから、ぁ…ッ!」
大胆とも謙虚とも取れるBの発言は、Aにとっては可笑しく思えた。
自分はなかなかBには甘いのだと、Aは実感する。
AはBの首や頬にキスをしてから、そっと耳元へ口を寄せた。
「愛してる」
「っ」
求めたものよりも価値のある言葉をAに囁かれて、Bは耳が火傷しそうなくらい熱くなった。
「あっ、ぁ、ぁぁ…ッ!」
先ほどよりもAのペニスを締めつけながら、Bは喜んだ。
「イッちゃ、あっ、ぁぁぁ〜…ッ!」
BはAの肩をぎゅっと掴みながら、勢いよく精を放った。
「Bくん、っ」
AもBにぎゅうぎゅうと締めつけられ、ハメたまま射精した。
「ぁ、ぁ、っ」
熱く脈打つAのペニスから種が注がれたことに、孕めないからこそBは優越を感じた。
「精液で腹いっぱい…、Aくんの精子、俺の中で泳いでますよ」
AはBのアナルからペニスを抜きつつ、顔をしかめた。
「前々から思ってたが、君は下品だ、Bくん」
「その下品に欲情してるくせに。大概、あんたもモノ好きですね」
Bは起き上がると、デスクから下りて今度はその下へ潜り込んだ。
「何やってる?」
「Aくん、仕事再開するんでしょう?その間におそーじでもしてあげようと思って」
Bはいたずらをしているような顔で、口を開きわざとらしく卑猥に舌を出した。
「ふぅ…」
Aはため息をついて、椅子に腰を下ろした。

「…早く家に帰りたい」
Aはそう呟きながら、皺になった資料を再び手に取った。



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