吉先輩と
 
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氷室

世の中関わってはいけないものがある。最近転校してきた帰国子女は、優雅に笑って、人を殴った。その現場を目撃したのが、昨日のこと。
「君に、もう一度会いたくて」
人目につかない教室に追い込まれる。壁に手をつく。不敵に微笑む。
氷室辰也はその獰猛な本性を垣間見せた。

2014/02/17

今吉先輩と裏

奥を抉られ、反射的に悲鳴じみた嬌声が喉から溢れる。
「気持ちええ?」
快楽に溺れ、恥ずかしげもなく頷くと、
「なあ、」
薄く開いた瞳は妖艶な輝きを秘めていて、思わず息を呑んだ。
「好きって言うてみ」
低く掠れた声は、甘く思考を溶かしていく。
そしたらもっと、気持ち良うしたる。

2014/02/17

黄瀬と優等生

最近仲良くなった女の子は頭が良い。努力型で、俺とはまるで正反対。先週の金曜にバスケのルールブックを渡せば、月曜には大体理解してて。
「随分と暇だったんスねえ」
笑いながら茶化せば、
「黄瀬君の試合見に行くためだよ」と、真顔で返された。
彼女の真面目さには本当、舌を巻く。




2014/02/17


「綺麗ですね」
「せやなあ」
「光が明滅するのは雌が雄を惹きつけるためでしたっけ?」
「逆や。雄が雌惹きつけんねん。生物て結構雄が頑張らへん?」
「確かに。あっ、でも生殖行動のためかどうかは諸説あるらしいです」
「そーなん?」
「はい。敵をおどかすためとか色々」
「随分詳しいなあ」
「Wikipediaで勉強しました」
「張り切り過ぎや」
「蛍好きなんです!」
「そんな自分に、ムードも何もないこと言うてええ?」
「そんなものありません」
「せやなー」
「で、何ですか?」
「ちょっと色違うんやけど蛍光タンパク思い出してまうなあって」
「うわー」
「ええ、思わへん?」
「分からなくもないですけど、」
「ああ蛍光って蛍の光からきてんねんなあって」
「蛍光タンパクと言えば先輩、面白いイメージング技術できたので知ってます?」
「ああ新聞で見たわ」
「あれすごくないですか、○○○が××××××で、」
「せやけど△△△△なんやから、◎◎なこともありうるし―――」



「あ、蛍おらんようになった」
「あ」
「帰るか」
「蛍に引かれちゃいましたかね」
「理系女子キモいー言うてたで?」
「先輩も話に乗ってたじゃないですかー!」

2014/02/16

土用の丑の日

「うな重食べたい!」
「なんですか突然」
「突然やない!ほら今日は、」
「土用の丑の日でしたね」
「さらっと言うたなー。とにかくほら、今日の晩飯は、」
「鰹のたたきと焼きナスと梅の和え物に玉ねぎの味噌汁です」
「何それめっちゃ美味そう!やなくて!」
「いつにも増してテンション高いですねー。うな重じゃないですよ」
「え」
「うな重じゃないです」
「…………なんで?」
「高いですもん」
「いや、でも、」
「土用の丑の日終わってからの方が安くなるし」
「」
「そもそも土用の丑の日というのは鰻が夏に売れないからと、鰻屋が仕掛けた罠です。先輩がそれにこだわるとは意外でした」
「せやかて、好きやもん」
「(拗ねてる先輩可愛い)」
「そんなに食べたいですか」
「めっちゃ食べたい」
「そんなに好きですか」
「めっちゃ好きや」
「じゃあどうぞ」
「はえ?」
「いつもお世話になってるお礼です」
「出来る彼女やで信じられへん!!」
「はあ、彼女じゃないです」
「頭撫でたるさかいこっち来い!」
「やです」
「ほんまめっちゃ好きやー!」
「何故でしょうか、さっきの鰻重に対してよりとても軽い気がします」

2014/02/16

花火

「んー?」
「花火」
「なに?」
「聞こえてるくせにっ!」
「聞こえてへんよー。店のBGMやかましもん」
「は、花火買ってもいいですか!」
「おー、やっかましなあ」
「先輩が聞こえないって言ったんじゃないですか!」
「なんで自分は花火したいん」
「は?!好きだからに決まって、」
「……正直に言うてくれんとカートに入れるん許可せえへんよ?」
「は、え、ええ?!」
「(動揺しとる)」
「――花火大会、ダメになったじゃないですか……」
「うん」
「先輩すっごく楽しみにしてたし、だからせめて代わりに先輩と花火できたらなあと、」
「(わーめっちゃ素直)」 「思って…………」
「(素直なとこめっちゃ可愛えんやけどなあ)」
「これで満足ですか!」
「まだ満足してへん」
「はあ?!」
「勿論、浴衣着てくれんねやろ?」
「……浴衣好きですね」
「浴衣は日本の夏の浪漫やでー?」

2014/02/16

花火大会

「そお。ワシもさっき知ったとこなんやけどな。行こーや学校から近いし。準備も楽やで」
「そうですか、嫌です」
「断るんはっや!」
「みんなに見られたらどうするんですか。絶対青峰くんやさつきちゃん行くでしょー」
「えー、そないなこと心配いらへんて」
「心配です。研究室内で変な空気になるのはお断りですからね。過ごしにくい」
「(そもそもみんな知ってんねんけどなあ)」
「だから嫌です」
「いやいや言わんと行こうやいけずー」
「い や」
「……そない嫌か?」
「……そんなに行きたいですか」
「たまにはちゃんとしたとこ連れてってやりたいからな」
「……別に、」
「?」
「別に競馬見に行くのも不満じゃないです。それに先輩、たまに買い物も付き合ってくれるし、」
「はぁ?」
「なんですか、何か変なこと言いましたかっ」
「ツンデレこじらせすぎやろほんま」
「うっさいです」
「あーもー、お前なあ、花火好きなんやろ」
「…………まあ、はい」
「なんでもええから花火大会行きたい言うてたやん」
「うー」
「ぐだぐだ言わんと行くでー」
「もう、何日なんですかっ」
「来週の火曜」
「えーっと、火曜火曜……あ」
「どないしたん?」
「…………その日実験入ってますよ」
「え、うそ?!」
「ほらここ。そういえば先週決めましたねえ」
「アカン、マジや」
「時間かかる上にずらせないっていう」
「…………あー」
「そんな顔しないでくださいよ、来週頑張りましょーよー」
「せっかく、」
「せっかく?」
「自分の浴衣姿見れる思たのに……」
「それが本音ですか」

2014/02/16

好きなタイプは?

「黄瀬くんです」
「なんで?」
「眼鏡かけてなくて糸目じゃなくて黒髪じゃなくて爽やかでオシャレでかっこいいからです」
「………………」



「ほんまに好きなタイプは誰なん?」
「笠松先輩です」
「あー」
「どうしたんですか」
「笠松イケメンやもんなあ」
「本当にかっこいい人だと思います」
「せやな」
「…………」
「せやなあ……」
「ガチで落ち込まないでくださいって。先輩もかっこいいですから」



「先輩?」
「なん?」
「かっこいいのは笠松先輩だけど、しょういちくんの方が好きですよ?」
「あーうん、えーっと、おおきに(翔一くん?)」
「寂しそうな顔しちゃダメです」
「……………」
「先輩?」
「……ワシのこと好き?」●REC
「先輩のこと?」
「うん」
「大好き」

「………忘れてください」
「めっちゃ可愛かったほんまあかんかった」
「先輩!忘れてください!今すぐ!」
「あかん録画してもーたこれだけで永遠に抜ける気がする」
「最低!!」

2014/01/03

最近は難聴主人公が流行ってるby黛

「腹減った」
「…………?」
「聞こえへんかった? お腹空いたーて」
「何ですか聞こえないです」
「この至近距離でか」

「風呂入ろか」
「えっ、なんですか?」
「せやから、風呂、」
「洗い物しなきゃー」スタスタ
「…………」

「明日の予定なんやけど、」
「水の音でよく聞こえないですー」ジャー
「せやったら水止めや」
「?」ガチャガチャジャー
「」

「なぁ、」
「、っうわぁ!?」
「はいはい暴れんの」
「いいいいきなり押し倒して何を、」
「ほんま不可解やわ自分」
「っ、耳元で喋らないで下さい!」
「お断りや。んなことしたらまた聞こえへんふりするんやろ」
「えっと、えっ、」
「怒ってへんのやろなぁとは思てるわ。自分の機嫌や話さへんでも分かるしな」
「うぅ、」
「どーせくっだらん事でも考えてんねやろ?」
「そ、そんなことは、」
「ほんまにないん?」
「ない、ですっ」
「なに顔逸らしてねんこっち見ぃや」ムギュウ
「あ、」
「ワシの目ぇ見てもっかい言い?」
「す、」
「んー?」
「ごめんなさい……」



「自分アホなん?てゆーかその難聴主人公の解釈間違ってる思うけど」
「そうなんですか?!」
「好きやーとかこっそり言うたり恥ずかしそうに伝えたりする女の可愛さ?よう分からんけどそういうんを表現するためやろ」
「つまり、」
「ワシが自分に好きやて言われた時にすんのが正解。そんなんされてもワシとしては耳鼻科への検診をオススメすることしか思いつかへんけど。日常生活でやるんはただの耳が悪い子やな」
「…………」
「こんなアホやったん知らんかったわ」
「…………」
「てゆーかそもそもそれ流行ってへんし」
「へっ?!」
「黛クンもからかっただけや」
「そ、そんな!」
「はい反省」
「すみませんでした!!」




2014/01/03

先に寝てもいいですか?

「……せんぱい」
「んー?」
「据え膳食わぬは武士の恥、です?」
「いきなりなんやねん」
「知恵袋見てたんです」
「寝てたんちゃうの自分」
「その、寝つけなくて、」
「せやったらもう遅いし帰るか?送ってくで」
「えっと、……」
「もうちょいおる?」
「はいっ」
「で、知恵袋がどないしたん」
「その、彼氏に添い寝してもらって先に寝てもいいのか?みたいな質問があって」
「けったいな質問やなソレ」
「私結構寝てるなぁって思ったらますます眠れなくなりました」
「アホや」
「うっさいです」
「安心しい。ヤりたなったら問答無用で襲うさかい」
「先輩サイテー」
「肩殴んなーて」
「もー」
「………………めっずらし」
「な、何ですか」
「なに、自分。今日構ってちゃんなん?」
「ちっが、」
「甘えたな声出して。何が据え膳食わぬは武士の恥や。誘ってるてとられてもしゃーないで?」
「違いますー」
「あと、ワシのことちゃーんと彼氏思てくれてるみたいで何よりやわ」
「それはないです」
「否定早すぎやない?」




2014/01/03


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