「よかったね、2人とも丸く収まったみたいで」
「せやな」
部室棟の物陰から、音を立てないようにして立ち去る。
「でも、びっくりした。まさか蔵がデバガメみたいなことするなんて」
「ハハ、」
ある程度離れたところに出ると、ひなが驚いたように口を開く。
俺かて、ほんまはあんな覗き魔みたいな行動はしたなかった。
けど。
「やっぱ気になるやん?可愛い後輩の行く先は」
特に財前は素直やないし、水無瀬ちゃんは水無瀬ちゃんで変なところで聡いから、逆に変な勘違いしてまうんやないかとひやひやしとった。
「それはそうかもだけど、ちょっとお節介過ぎない?」
「せめて面倒見よすぎやないって言うてくれ」
ひなに苦笑を返して、財前と水無瀬ちゃんがおる場所を振り返って。
「……俺はひなを絶対に幸せにしたるから、自分も幸せになるんやで、財前」
1度は同じ人を好きになったヤツに向かって、小さくエールを送った。
「……蔵?どうかした?」
「いーや、なんでも」
きょとんと小首を傾げるひなの手を、俗にいう恋人つなぎで握って、家路をたどった。
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