ali / だって、 | ナノ

04

長い時間眠っていたみたいだ。
目が覚めると、窓の外がオレンジ色に染まっていた。

「あれ、タオル。」

体を起こすと、額にタオルが乗せられていた。
しかも割と冷たいし、誰かがちょこちょこ替えてくれてるんだろうか。
体もだいぶ楽になっている。

「お、」

ゆっくり扉が少し開いて、隙間から顔を出した人物と目が合う。
マルコだ。

「……起きたかよい。」

「うん、タオルありがと。」

マルコは少し俯いて、いや。とか、よい。何とか言ってもごもごしている。
このタオルはマルコが取り替えてくれたみたいだ。

「だいぶ楽になったよ。」

「エリナが熱出すなんて珍しいねい。」

どうしたらいいか分からない顔をしていたので、側にある椅子を引いて、とんとんと叩いた。
マルコは素直にやってきて、そこに腰掛ける。

「出会った時も、凄い熱だったなあ。」

「うん。だから熱出すと決まって、あの頃の夢を見るの。」

「そうかよい……」

微かに、マルコの眉間にシワが寄る。

「幸せな夢だよ。親父が私のこと娘だって言ってくれる夢。」

そう言うと、マルコは明らかにほっとした顔をする。
マルコは優しい。
私よりも、いや誰よりも、私の過去を気にしている。

「マルコ、」

「ん?」

「幸せだよ私。」

「あぁ……」

「オヤジがいて、兄貴がたくさんいる。」

「よい。」

「何より大好きなマルコがいるもん。」

ガタッと椅子が音を立てる。
背もたれに体重を掛けて、転びそうになったマルコが真っ赤な顔をしていた。

「お前熱でもあるのかよい!?」

「あるよ。」

「そ、そうかよい。」

そうだったな、と妙に納得したように頷くマルコ。
熱があるからでも何でもない。
私はマルコが大好きだ。
そして、マルコをからかうのが大好きだ。

「マルコ。」

「……」

「一緒に寝てくれない?さみしい。」

目を合わせてくれなくなった。

「……風邪が移るのはごめんだよい。」

「だよねー。」

じょーだん。と言うと、一瞬こちらを見て、ため息をつかれた。
そして立ち上がり、背中を向ける。

「……また明日来る。」

ドアから出る途中、振り向きもせずマルコは言った。
私が返事をすると、そのまま出ていってしまった。
布団を鼻まで引っ張り上げて、私はにやける口元を押さえた。



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