ali / だって、 | ナノ

05

「37.4!」

「だめだ、寝てろい。」

うわーん!と声を上げて、私はベッドに倒れこんだ。
あ、頭痛い。
相変わらず熱が下がりきっていない。

「でもさでもさ、めっちゃ久々だよ!?お買い物したいし、カフェとか行きたいし、土を踏みたいよ……!」

そう、久しぶりの寄港なのだ。
船がもうすぐ港に着くと、外が騒がしい。
私だって島に降りたいのだ。

「停泊するんだ。しっかり治してから降りりゃいいだろい。」<

「だって!!!みんな先に降りるんでしょ!?私がいなかったらどうせ綺麗なお姉さんがいる店に行くんだ!!」

マルコはいつも眠そうな目をちょっと見開いて、口をぱくぱくしている。
びっくりして、言葉が出てこないようだ。

「そうでしょ?」

「あ、あのなあ……!」

あわあわして赤くなったり青くなったりしている。

「知ってるんだから!みんなから香水のにおいがするもんね。」

「お、俺は行ってない!」

「えー?」

ほんとかなあ、と目を細めてマルコを横目で見る。
ほんとだよい!と必死になるマルコが可愛い。

「じゃ、イゾウは?ラクヨウは?」

「……っ」

マルコは私に嘘をつかない。
というか、つけないようだ。
この様子を見ると、ほかのみんながそういうお店に行くのを私には隠したかったみたい。
でもどうやら、マルコがそういうお店に行ってないというのは本当かもしれない。
そういうのって、長年の付き合いで何となく分かる。

「マルコぉ」

「ん?」

私がマルコを呼ぶとき、マルコはひどく優しく返事をする。
まるで小さい子を気遣うように。

「熱下がったら、一緒に街に行っていい?」

「いつもそうしてるだろい?」

「私のせいで、マルコ溜まってない?」

「あのなあ……!!」

その話はやめろ!と怒られた。
マルコは私が話を下ネタに持ってくと、真っ赤になって慌てる。
童貞じゃあるまいし。
……え、違うよね?

「ちげぇよい!」

「あれ?口に出てた?」

「ダダ漏れだ!」

もう一度言うが、私はマルコをからかうのが好きだ。
マルコが私に気を遣ってるのかなんなのか、そういうお店に行かないのを少し嬉しく思う反面、申し訳なくなる。
……まあお店じゃなくてもどっかで発散してるかもしれないし、こーゆーリアルなとこには突っ込まないことにしよう。

「じゃあまた明日な。」

「はーい、いってらっしゃい。」

また明日、という言葉ににやけそうになりながら、ふて腐れた顔をしてみせる。
ちょっと困ったように笑って、マルコは出て行った。
賑やかな外にため息をついて、仰向けにベッドに寝転がる。
外はとっても、いい天気だ。



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