16
酒場に着いた時、既に皆出来上がっていたのは言うまでもない。
しかし騒ぎの中心にいるのがエリナだということには、驚かされた。
「あ!まるこぉー!さっちぃ!」
ベロベロだ。
クルーがエリナに無理矢理飲ますなんてことはないし、自分で飲んだんだろうか。
こんなに酔ってるのも初めて見た。
「皆大好き!ありがとねぇー!」
俺らもエリナが大好きだぜぇ!なんて口々に野太い声。
エリナは危なっかしい足取りで、こっちに歩いてくる。
「おいおい、飲み過ぎだぞエリナ。」
「そんなことないよ。超元気!」
それが飲み過ぎだって言ってんだろ、とサッチがテーブルに座り、横にエリナを座らせる。
その向かいに座り、自分も酒と食事を頼んだ。
「無理しないで!お兄ちゃん心配だわ!」
サッチが何故がオネエ口調でそう言って、エリナの背中を摩る。
エリナはニコニコしながら、本当に元気だよ、といった。
「よかった、みんなちゃんと帰れて。」
攫われた子供達の話だろう。
サッチがそうだな、と笑いながらも、どこか苦い顔をする。
「みんなちゃんと帰る場所があるんだね。」
「お前だって家族がいるじゃねぇか。」
「人間って無いものねだりだよー。私ってわがままなの。だめだなー。」
ケラケラ笑うエリナが痛々しい。
親に迎えられ、自分の家に帰って行く子供達を見て、エリナは何を思っただろうか。
「みんながいるのに、虚しくなる時があるの。」
サッチは何も言わず、無言でエリナの背中を摩る。
エリナは机に突っ伏して、俺が渡したノンアルコールのジュースグラスを揺らしている。
「こないだからね、ううん、もっと前からかも。ずっと家族って何かなーって思ってるの。私は家族になれてるのかなあ。」
「当たり前だろ?エリナは俺らの大事な妹だぜ?」
サッチがエリナに頬ずりする。
サッチのスキンシップを、いつもキモいキモいと嫌がるエリナは、この時は嫌がったりせず、照れくさそうに笑っていた。
そんな風にエリナを励ましてやれるサッチを、少し羨ましく思う。
「なぁエリナちゃんよ。いつも無理に大人になろうとしなくていいんだぜ?いつだって悲しくなれば泣けばいいさ!」
サッチが両手を広げて、ここ空いてるぞ!と胸を張る。
エリナは、無理!と言いながらも、満更でもなさそうに笑っていた。
「昔はさっちぃーってよく抱きついてくれたのになあー。」
「もうそんなに子供じゃありませーん。」
「そりゃあ俺たちもよくわかってるぜ?最近エリナどんどん可愛くなってるもんなあ。なあマルコ?」
急にそう振られて、ちょっと戸惑って頷く。
言われてみれば、大人っぽくなったと思う。
まだまだガキだと自分で思い込んでいたが、背も勿論伸びたし、顔つきだって変わった。
ずっと一緒にいると変化には気付きにくいが、大人になっていってるんだなあと思う。
「ミラ達みたいに色気が出ればいいにのにー!」
エリナが頬を膨らます。
こういう仕草が子供っぽいんだろ、と思うが、変わらないところがエリナのいいところでもある。
「おいサッチー!こっちこいよ!」
「お、お呼びだ。ちょっと失礼するぜ!」
遠くで呼ばれ、サッチが席を立つ。
テーブルに顎をついて、ぼんやりとグラスを見つめているエリナと、二人きりになった。
「……ねぇねぇ、前さ、ミラと何話してたの?」
「いつだよい?」
「こないだ、朝ご飯の時。」
言われて記憶を思い起こし、あれか。と思い出した。
でもミラには、エリナに言わないように口止めをされている。
「何でもないよい。」
「ふぅーん。隠し事なんてずるい。」
視線を逸らされ、寂しい。と小さい声が聞こえた。
「そのうちわかるよい。何もお前に言えないことじゃねぇよい。」
「そーなの?気になる。」
エリナは相変わらずこっちを見ない。
こういうところは、昔から変わらない。
オモチャを取られた子供みたいに拗ねる。
「お前はみんなに愛されてるんだよい。」
あ、こっちを見た。
首を傾げて、よく分からないといった顔をしている。
「マルコは?」
「ん?」
「マルコも私のこと愛してる?」
おいちょっと待て、なんでドキッとした?
「あ、当たり前だよい。」
「やったあ。」
へへへ、と笑うエリナ。
目がとろんとしている。
サッチの声がまた蘇ってきた。
"妹ならいいんじゃねぇの?"
妹なら?
しかし騒ぎの中心にいるのがエリナだということには、驚かされた。
「あ!まるこぉー!さっちぃ!」
ベロベロだ。
クルーがエリナに無理矢理飲ますなんてことはないし、自分で飲んだんだろうか。
こんなに酔ってるのも初めて見た。
「皆大好き!ありがとねぇー!」
俺らもエリナが大好きだぜぇ!なんて口々に野太い声。
エリナは危なっかしい足取りで、こっちに歩いてくる。
「おいおい、飲み過ぎだぞエリナ。」
「そんなことないよ。超元気!」
それが飲み過ぎだって言ってんだろ、とサッチがテーブルに座り、横にエリナを座らせる。
その向かいに座り、自分も酒と食事を頼んだ。
「無理しないで!お兄ちゃん心配だわ!」
サッチが何故がオネエ口調でそう言って、エリナの背中を摩る。
エリナはニコニコしながら、本当に元気だよ、といった。
「よかった、みんなちゃんと帰れて。」
攫われた子供達の話だろう。
サッチがそうだな、と笑いながらも、どこか苦い顔をする。
「みんなちゃんと帰る場所があるんだね。」
「お前だって家族がいるじゃねぇか。」
「人間って無いものねだりだよー。私ってわがままなの。だめだなー。」
ケラケラ笑うエリナが痛々しい。
親に迎えられ、自分の家に帰って行く子供達を見て、エリナは何を思っただろうか。
「みんながいるのに、虚しくなる時があるの。」
サッチは何も言わず、無言でエリナの背中を摩る。
エリナは机に突っ伏して、俺が渡したノンアルコールのジュースグラスを揺らしている。
「こないだからね、ううん、もっと前からかも。ずっと家族って何かなーって思ってるの。私は家族になれてるのかなあ。」
「当たり前だろ?エリナは俺らの大事な妹だぜ?」
サッチがエリナに頬ずりする。
サッチのスキンシップを、いつもキモいキモいと嫌がるエリナは、この時は嫌がったりせず、照れくさそうに笑っていた。
そんな風にエリナを励ましてやれるサッチを、少し羨ましく思う。
「なぁエリナちゃんよ。いつも無理に大人になろうとしなくていいんだぜ?いつだって悲しくなれば泣けばいいさ!」
サッチが両手を広げて、ここ空いてるぞ!と胸を張る。
エリナは、無理!と言いながらも、満更でもなさそうに笑っていた。
「昔はさっちぃーってよく抱きついてくれたのになあー。」
「もうそんなに子供じゃありませーん。」
「そりゃあ俺たちもよくわかってるぜ?最近エリナどんどん可愛くなってるもんなあ。なあマルコ?」
急にそう振られて、ちょっと戸惑って頷く。
言われてみれば、大人っぽくなったと思う。
まだまだガキだと自分で思い込んでいたが、背も勿論伸びたし、顔つきだって変わった。
ずっと一緒にいると変化には気付きにくいが、大人になっていってるんだなあと思う。
「ミラ達みたいに色気が出ればいいにのにー!」
エリナが頬を膨らます。
こういう仕草が子供っぽいんだろ、と思うが、変わらないところがエリナのいいところでもある。
「おいサッチー!こっちこいよ!」
「お、お呼びだ。ちょっと失礼するぜ!」
遠くで呼ばれ、サッチが席を立つ。
テーブルに顎をついて、ぼんやりとグラスを見つめているエリナと、二人きりになった。
「……ねぇねぇ、前さ、ミラと何話してたの?」
「いつだよい?」
「こないだ、朝ご飯の時。」
言われて記憶を思い起こし、あれか。と思い出した。
でもミラには、エリナに言わないように口止めをされている。
「何でもないよい。」
「ふぅーん。隠し事なんてずるい。」
視線を逸らされ、寂しい。と小さい声が聞こえた。
「そのうちわかるよい。何もお前に言えないことじゃねぇよい。」
「そーなの?気になる。」
エリナは相変わらずこっちを見ない。
こういうところは、昔から変わらない。
オモチャを取られた子供みたいに拗ねる。
「お前はみんなに愛されてるんだよい。」
あ、こっちを見た。
首を傾げて、よく分からないといった顔をしている。
「マルコは?」
「ん?」
「マルコも私のこと愛してる?」
おいちょっと待て、なんでドキッとした?
「あ、当たり前だよい。」
「やったあ。」
へへへ、と笑うエリナ。
目がとろんとしている。
サッチの声がまた蘇ってきた。
"妹ならいいんじゃねぇの?"
妹なら?