ali / だって、 | ナノ

17

夢を見た。
何年か前の夢。
私は泣きながらマルコにしがみついて、彼は寝るまで背中を摩ってくれた。
怖い夢を見たり、苦しい過去に悩まされて、よく夜中に迷惑をかけたことを思い出した。
そんな時はいつもマルコが側にいてくれた。

「おい、エリナ。起きろよい。」

「んー……」

待ってマルコ、もうちょっと、もうちょっとだけ……

「もうちょっとじゃねぇよい。」

「ん?」

意識がはっきりしてくる。
どうやら夢じゃないらしい。
視界いっぱいに、白ひげ海賊団の刺青があった。

「どわー!私に何したのー!?」

「バカか!お前が離れなかったんだよい!」

冗談なのに。
そんなに真っ赤になって怒らなくても。
酔って騒いだ記憶はあるが、いつどうやって寝たのか全く覚えてない。
もしかしたら、泣きついたのも夢じゃないかもしれない。

「私もしかして泣いた?」

「あー、あんな子供みたいに泣くやつに手出すかよい。」

ふん、とマルコが鼻で笑う。
仕返しのつもりか。

「ふん、真っ赤になって説得力なーい。」

「なってねぇ!」

「本当は緊張して寝れなかったんじゃないのー?」

ぐぐ、っとマルコが歯を食いしばった。
もしかして本当に寝れなかったのかな。

「あれ、図星?こんな可愛い子が側にいちゃそりゃ寝れないよね……」

「お前が泣くからあやしてやったんだろい!寝れるか!」

あやすって、赤ちゃんじゃあるまいし。
マルコと言い合いをしてると、ガチャっとドアが開いて、サッチが入ってきた。

「あれ?あれあれ?お二人さんもしかして……?」

サッチがわざとらしく私たちを指差して、ニヤニヤしてくる。

「「違う!」」

お、息ぴったり。
でも違うもんは違う。

「仲良しなこった。エリナー、お兄ちゃんとも一緒に寝ようぜー。」

「え!やだよ!」

サッチがベッドにグイグイ入ってくる。
私は後ろにマルコ、前にサッチがいる状態で布団の上から抱き込まれた。
サッチと寝たら、それこそ何されるか分からない!

「おい!心の声漏れてるっての!妹に何もしねぇわ!」

「ちょっと!心読まないでよ!」

「お前は心の声が全部漏れてんだよ!」

サッチとも結局言い合いになる。
マルコが後ろから耳元で、サッチに離せ!と言ってる声が頭に響く。
あー、頭痛い。

「ところで、ここどこ?」

「酒場の上が宿だから借りたんだよい。お前がぜんっぜん歩かねぇからな!」

「それは失礼いたしました。」

け!っと余分な一言をつけ、首だけで後ろを振り返って謝る。
サッチがケタケタ笑っている。
彼が入ってきて開けっ放しのドアの向こうでは、起きてきたクルー達が廊下を行き来している声がした。
丁度みんな起きてきたみたいだ。

「ほれ起きろい!」

「もうちょっとぉ。」

「サッチ!気持ち悪ぃ声出すな!」

サッチの甘えた裏声に、私は笑いが止まらない。
みんなでギャーギャー騒いで、何だかんだ言って仲良しで幸せだなあ、なんて思った。
二人の体温が暖かい。



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