no title
2015.11.15 Sun 03:11
彼の呼び声にようやく振り返った彼女は、乱れた髪の隙間から赤く腫れて虚ろになった目を覗かせていた。
「ねぇ、やっと解ったのよ。あたし、あなたのことをずっと苦しめていたのね。信じられないような話だけど、本当なんでしょう?だからいつも、知らない間にあたしのそばにいて、全部知ったような顔であたしを宥めてくれてたんでしょう?あなたのことは、誰にも見えないと思ってた。でもあなたを知ってるって言う人が来たの。彼から全部聞いたわ。あなたのことも、あたしのことも。ごめんなさい、あなたの全てをあたしが奪っていたのね。あたしのせいで、あなたは何者にもなれなくなってしまうのね。ごめんなさい、ごめんなさい、あなたは何も悪くなかった。あなたはあたしの全てだったのに、あたしは何も気付かなかったの。あなたに甘えてあなたに叫んであなたにすがってあなたを否定してあなたをずっと傷付けてきた。だからもういいのよ、あなたを縛るものは何も無いの。もう遅いのかもしれないのはわかっているわ。でも、それでも、お願い、お願いよ…」
掠れた声は嗚咽と混ざって消えていく。すがり付く腕を支えながら、彼は遠くで何かが崩れる音を聞いた。
違う
違う
俺が聞きたかったのは、そんな言葉じゃない
(トミオでビット君発狂ルート)