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百目鬼は何も答えなかった。
当たり前だ。普通の神経してたらここまで直接的に言われて、へらへらとはいそうですなんて言えるわけが無い。

もっと別の出会い方をしていれば友達になれたのかもしれない。
そんな風に考えてしまう程度には今の試合の内容を気に入っているのだ。

だからこそ許せなかった。

「もういい……。」

話し合いでなんとかなるような問題じゃない。
言葉を交わすだけ時間の無駄に思えた。

百目鬼の上からどく。
もう全部お終い。関係の無い人間との話だ。

家に帰って不貞寝してしまおう。

出口に向かって一歩踏み出したときだった。

「……罰ゲームではなかったから。
それだけは信じて欲しい。」

そう百目鬼は言った。
思わず百目鬼の顔を見てしまった。

百目鬼の表情からは、本当のことを言っているのかわからない。

「じゃあ、なんで。」

それこそ何故だ。
何故あんな馬鹿げた告白もどきをしたのか。何故試合をすることにしたのか。何故わざと負けたのか。

こいつの言動は最初から意味が分からなかった。
何一つまともな理由が想像できるものが無かったのだ。

だから、せめて理由を聞かせて欲しい。
けれど、やっぱり百目鬼はそれ以上何も話しはしなかった。

俺は結局何も知ることができないまま帰路につくしかなかった。

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