×××ゲーム

14


松尾が同じ小学校だったのは何となく覚えているけれど別に接点なんて何もなかった。

それが本当の事でも嘘でも、別にこの一週間とは何も関係ない事だ。

「だけどね――」

その声色に自嘲が含まれている気がしたのは気のせいか。

「なんか、好きになっちゃったんだよね。」
「はあ?」

何を言っているのか分からなかった。
罰ゲームの続きだろうか。その筈なのに、松尾の顔が赤くて、少し泣きそうな表情でどうしたらいいのか分からない。

「あー、でもちょっと嬉しそうな顔してるよね。」

穂田って結構表情に出やすいよねと言われる。
知ってる。
だから、ずっと一人でいたのだ。

惚れっぽいし、それがすぐにバレそうだから、自分から人の輪ってやつに入らない。
そう決めてたから、俺の気持ちを知っていてやっているのかもしれない。

「なんで、そもそも俺なんだよ。」
「えー。好きだと思ったから。
じゃ、ダメなんだよね。ええっと、割と穂田、面白いから。」

松尾に言われるけれど納得はできない。

「ええ、でもそんな事言ったらお互い様じゃない?」

男が好きな人? って聞かれたときから分かっていた。
多分こいつは俺の気持ちを知っててやってる。

だからこそ、それが罰ゲームでやっているとしか思えないのだ。

「信じてくれる?」
「訳ないだろ……。」
「だよねえ。」

ニコニコと笑い始めた松尾はこのやり取り自体が罰ゲームの一環でしたと言われても、まあそうだろうなと思う。

「うーん。俺の気持ちを証明する方法かあ……。」

一瞬思案したような表情になった松尾は、すぐにニヤリと口角を上げた。

首の後ろに手をまわして支える様にされる。
松尾の小指がちょうど項に触れていて、他の指が俺の頭を固定している様な体制だ。
そのまま項を撫でる様にされて、慌てて振り払うべきだと脳が働く。

けれど、それはできなかった。
だって、松尾の顔が近づいてきて、彼の手を振り払うには彼の頭もどかさないといけない。

あっ、と思ったときにはキスをされていた。
唇と唇が触れてるのが分かる。

頭が沸騰しそうになる。
心臓がバックンバックンなっているのが頭の中で反響している。

松尾の肩を押すと松尾の顔が離れる。

「なんでキスなんか……。」
「だって、穂田こうでもしないと信じないだろ。」

さすがに罰ゲームでもキスは無理だってことを言いたいのだろう。

「それにお前、俺の事好きになってるでしょ?」

付け加えた言葉を笑って言う松尾に言い返すことができない。
多分昨日もうすでに気が付かれている。
その位俺にも分かるけど、お互いいそれには触れない。

そんなにも俺は分かりやすいのだろうか。
分かりやすいと言われても、違うと言われてもどちらも微妙だから聞かない。

「もう一回していい?」

今無断でキスしたくせに、態々おうかがいをする松尾は相変わらず面白そうにニヤニヤとしている。

仕方がなくため息をついて「一週間って話、無しにするなら別にしてもいい」と答えた。

松尾は「とりあえず末永くって事で。」と笑いながらもう一度顔を近づけた。


END

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