×××ゲーム

13

松尾の家は思ったよりも駅から近くて、家には誰もいなかった。

案内された松尾の部屋は思ったより雑然としている。

「昨日の話なんだけどさ。」

脅さないでくださいって頼むべき状況なのだろうか。
男が好きな人間だとまるで確証があるみたいに聞いてきた。

本当に気になっているのは松尾のあの表情なのに、話さねばならないのはなんであの場から逃げたかの言い訳だ。

「悪かった。昨日勝手に出てっちゃって。」

なるべく軽い調子で言う。

「それは、もういいよ。
それより俺の歌どうだった?」

そう言われて何も言わないで逃げてしまったことに気が付く。

「静かで、いい曲でしたよ。」

こんな話がしたくて態々家まで呼んだのだろうか。

「聞いててどんな感じだった?」
「……水面に映る月」

そこまで言って口を閉じる。
何を言ってるんだ俺は。
恋を歌っていた歌詞について何か言う事は出来なかった。

「はは、そうか……。
やっぱり、面白いよね、穂田は。」

訳の分からない事を言ってるのに、松尾は嬉しそうに笑っている。

「……罰ゲームの内容を教えてあげるよ。」
「一週間付き合う以外の条件があったのかよ。」

松尾が笑った。
それはそれは面白そうに。

俺に好きだとでも言わせることだろうか。それとも歌を素敵ねという事だろうか。

「『初恋の相手』に告白してくること。」
「は?」

何を言ってるんだこいつは、嘘を付くにしてもそれじゃあ騙されない。

「俺、小学校の時同じ学年のやつに恋しててさ。」

黒歴史ってやつ? とケラケラ笑いながら松尾が言う。
ちらっと話したら、じゃあそいつに告白して付き合えよって事になってさ。

そう言っている松尾の感情は読み取れない。

「別に、お前俺の事好きだから告白したんじゃないだろ?」
「まあ、ね。
告白した時は初恋なんてもう完全に過去の事で完全に面白半分でやってたよ。」

俺もそうだし、友達も知ってたから、パシリみたいなことしちゃった。
ごめんねぇ。と悪気もなさそうに言われる。


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