×××ゲーム

12

松尾の顔は、眉根をきゅっと寄せて、それなのに瞳は笑ったように崩れていて、それでいて泣きそうな様な顔をしていた。
頬がうっすらと上気していて、少なくとも俺を嘲っているような表情には見えなかった。
ニヤニヤともしていなくて、馬鹿にしてる訳でもない。
告白の時の無気力な顔とまるで正反対の顔をしていて、驚いた。

家に帰っても、松尾のあの顔が忘れられない。




「ねえ。今日の放課後ちょっといいかな?」

最初に呼び出された時も似たような感じだった。
丁度一週間。どちらにせよ今日で終わりだ。

嫌な噂を流されても、もう仕方がないって気もしているのだ。
多分、おおむね事実なのかもしれないし、俺が色々と軽率だった所為の部分もある。

だから、もうどうでもいいのだ。

だけど昨日の松尾の表情はやっぱり頭から離れなくて、思わず頷いてしまった。

昼飯には誘われなかった。

賭けという言葉が松尾のグループのあたりから聞こえた気がしたけれど、正直もう罰ゲームに付き合える気がしなかった。

別に松尾ももう何も言わなかった。

放課後カバンを持ったところで松尾に声をかけられた。

どこで話をするのがいいのかよく分からなかった。
告白をされた自販機前の中庭でも、公園でも誰かの目がある気がして嫌だった。

空き教室と思ったけれど、松尾は「じゃあ行こうか。」と言って先に昇降口へと向かってしまった。

追いかけて並んで歩く。

「わざわざ、どこ行くんだよ。」

今日で罰ゲームは終わりだ。
男が好きだって事でイジリたいなら、別に学校でやればいい。

「え? ああ。俺んち。」

当たり前の様に松尾は言うけれど意味が分からない。
そもそも、松尾の家の場所を知らない。

なんで? とは聞かなかった。
人に聞かれたくない話をしたいんだって事位分かる。
それが俺の性的指向についてなのかは知らないけれど松尾がそうしたいっていうならそれでよかった。

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