×××ゲーム

8

だから嫌だったのだ、嘘でも付き合うっていうのが。

俺は男が恋愛対象なのだ。距離が近ければいやでも意識してしまう。
緩く笑う松尾をみて、まずいと思った。

まずい。ものすごくまずい。

罰ゲームをしてくる様な相手だ。ニヤニヤとこちらを見下す様な目でみて、それからパシリの様な事をさせる。

でも、と考えてしまった時点でもう駄目だって分かってる。

ちらりと松尾を見ると目があってしまう。
柔らかく微笑まれて、そろそろと視線をそらす。

「単に友達増えたってだけのオチかよ」

なんか、恋人らしいことしろよ。と言われるが言葉の返しようがない。
そもそも、恋人じゃないんだかららしくするっていうのも難しい。

「明日、休みだしデートでも行く?」

松尾に聞かれて、思わず彼をまじまじと見てしまう。

「別にそれ二人で遊ぶってだけじゃね?」

パンをかじりながら面白くなさそうに言われて、じゃあどうするんだよと無駄な苛立ちを感じた。

「そもそも恋人らしいことってなんだよ」

松尾が舌打ち交じりで言う。
恋人ができたらしたいことは沢山ある。

だけど、それは恋人らしいことかって言ったらそうではないのかもしれない。
好きな人と一緒だから価値があるのであって、ただ二人でするってだけなら友達と変わらないのかもしれない。

友達なんて今はいやしないから分からないけど、多分そう。

「じゃあ、曲でも贈ってやったら?」

つまらなさそうに松尾の友達が言った。
キスすれば? とか言われるよりいくらかマシなのだけど、なんで曲と不思議に思う。

「今日軽音部の日だろ?」

丁度いいじゃん。
曲を作って目の前で歌ってあげるとか、恋人っぽくね?
ゲラゲラ笑いながら言うのを見て、ようやく松尾が軽音部なことを知る。

チャラそうな見た目と妙にあっている気がして、ちょっと面白い。

どうでもいい罰ゲーム相手の俺に曲なんてまともに作れやしないだろうし、そうでもそうでなくても俺にとって害がなさそうなのがいい。

「折角だから、二人で部活動がんばって」

面白そうだから、と言った口ぶりで松尾は言われる。

「今日時間あるよね?」

断れない口ぶりで松尾が言う。
仕方がなく頷くと松尾はニコリと笑って、「じゃあ放課後な。」と言った。

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