間違い探し

2-2

碌でもない趣味があって良かったと思った。

キスはやめて欲しいという前に、口付けをされる。
案外普通のセックスをするのかと思っていた少し前の自分は馬鹿だ。

まあ、現在進行形で馬鹿なのだろうが。

おざなりに後ろを解されて突っ込まれる。
圧迫感で呻いたものの、さほど痛く無かったのは多分その碌でもない趣味の所為だろう。

ゲイという訳では無いと思う。確かに夏目の事を恋愛的な意味で好きではあったがそれまでに好きだった相手は女の子だったし、こっそりと見たエロ動画は男女のもので普通に抜けた。

だから、なんで後ろを使っての自慰にはまってしまったのか自分でもよく分からない。

とはいえ、そんなデカいものを入れたことは無い。
ギチギチに広がった感覚がするそこは明らかに抽送出来る余裕なんて無いように思えた。

「キッツ……。」

呻くように夏目が言う。
恐らく自分が気持ち良くなりたいからなのだろう多めにたらされたローションがある分まだマシだ。

「男の中ってこんな狭いのか、普通。」
「入れた事ないから知らない、よ。」

言ってからしまったと思う。その位余裕はない。
ここで勘違いに気が付くと思ったが、俺が誰かに入れたことが無いと言う意味だとさらに勘違いを重ねたらしい夏目は舌打ちを一つしただけだった。

「めんどくせーな。動くぞ。」

いいとも悪いとも返事をする事はできなかった。
ただ、うめき声にもにた声を出し続けるしかない。

潰れたカエルの様なというのは言い得て妙だ。さすがにこの声は萎えることは分かるのでひたすら着たままのシャツの袖を噛んで耐える。

後背位なことも幸いして苦痛に歪んだ顔は見せなくても済みそうだ。

とてもじゃないけれど快楽を拾える様な状況じゃなかった。
だけど、繋がっているという事実とそれでも覆いかぶさった夏目の熱い息や、衣擦れの音、それだけで嬉しいと思ってしまうのだ。

初めて誰かとセックスというものをして、そこに愛なんてものは欠片も無い事は自分自身が一番わかっているけれど、それでも好きな人間とする事ができたことはラッキーだったのかもしれないと思う。

人付き合いが苦手な自分は多分一生恋人ができることは無いだろうし、だから、それでも幸せだ。そう自分に言い聞かせた。

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